研究課題/領域番号 |
19K06483
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
相馬 亜希子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (70350329)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 翻訳 / tRNA / 転写後プロセシング |
研究実績の概要 |
本研究課題では植物オルガネラにおける遺伝暗号の翻訳機構の理解を目的として、tRNAの転写後修飾によるコドン認識能の調節機構の解析と、tRNAアミノアシル化酵素の生化学的解析を進めている。1年目は植物オルガネラのtRNAの修飾が変動していることを実験的に証明した。また、tRNAの修飾反応を司る酵素群の候補とその遺伝子の絞り込みを行い、それらのリコンビナントタンパク質を調製が完了した。現在、その酵素活性や基質特異性についてin vitroでの生化学的解析を進めている。2年目は候補タンパク質の中からオルガネラのtRNA修飾を担う酵素および遺伝子を同定し、その酵素反応の特性を明らかにする。各候補タンパク質については植物細胞内での局在解析も進めており、2年目も引き続き実験を行う。 オルガネラのアミノアシル化酵素は核ゲノムにコードされており、細胞質で合成された後に各オルガネラに輸送され、対応するtRNAをアミノアシル化する。しかし、一部の植物オルガネラには対応するアミノアシル化酵素遺伝子が見当たらない。本研究では植物オルガネラで機能すると予想されるアミノアシル化酵素を探索し、その活性や細胞内局在の解析を進めている。これまでに候補タンパク質のリコンビナントタンパク質を調製し、現在はそのアミノアシル化活性の解析を進めている。2年目も引き続き実験を行う。また、当該酵素の細胞内局在の解析を行った結果、オルガネラで機能している可能性が示唆された。本年度はシグナルペプチドの有無による解析も行い、上述の結果の正当性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は主に2つの実験手法を用いて研究を行った。一つ目のtRNAの修飾酵素およびアミノアシル化酵素のリコンビナントタンパク質の調製およびそのin vitro反応系の構築についてはおおむね予定通りに進んでおり、その結果について学会発表を行った。一方、酵素タンパク質の植物細胞内局在解析に用いる蛍光顕微鏡は申請者の所属機関に設置されているが、1年目に故障のため使用ができなくなった。修理のめどが立たないため、外部機関での解析を行っている。これまでに一部の酵素タンパク質の細胞内局在が明らかとなった。2年目も引き続き、主に外部機関での解析を進める予定であるが、コロナウィルス感染拡大の影響により、所属機関および外部機関での実験実施がいずれも困難である可能性が高い。そのため、配列解析や論文作成準備など実験室での操作を伴わない研究活動を行う予定である。特に解析対象であるタンパク質の細胞内局在シグナル配列ついて、関連する文献の調査および配列の比較解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載した通り、酵素タンパク質のリコンビナントタンパク質を用いた生化学的解析はおおむね予定通りに進んでいるので、2年目はさらに実験を進め、酵素速度論解析を完了する。当該実験を行うにあたり、種々の基質の調製のためオリゴDNAの合成が必要である。一方で、各酵素タンパク質の植物細胞内局在解析は外部機関での実験が必要である。学生に実験補助を依頼し、スムーズな実験遂行を目指す。 上述の実験はすべて申請者の所属機関における実験室での作業となるが、コロナウィルス感染拡大による影響のため、3月より所属機関への入構が禁止された。規制は夏まで継続される予定であり、大幅な実験の遅れが予想される。
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