研究課題
既知の植物においてオルガネラで機能するtRNA修飾酵素およびアミノアシル化酵素遺伝子の多くは核ゲノムにコードされ、細胞質で合成された後に各オルガネラに輸送されて機能する。しかし、一部の植物オルガネラには対応する酵素遺伝子群が見当たらない。本研究課題では植物オルガネラにおける遺伝暗号の翻訳機構の理解を目的として、tRNAの転写後修飾によるコドン認識能の調節機構の解析と、tRNAアミノアシル化酵素の生化学的解析を進めている。1年目は植物オルガネラtRNAの修飾の割合が変動していることを実験的に証明した。また、tRNAの修飾反応およびアミノアシル化反応を司る酵素群の候補とその遺伝子の絞り込みを行い、それらのリコンビナントタンパク質の調製がほぼ完了した。2年目は上述の転写後修飾酵素やアミノアシル化酵素の候補タンパク質および基質となるtRNAを調製し、それらを用いたin vitro反応系を構築した。最終年度である3年目は、in vitro酵素反応系を用いた酵素速度論解析を行い、オルガネラの修飾酵素やアミノアシル化酵素の特性のより詳しい理解を目指す。また、学外組織との共同研究により、各酵素タンパク質の植物細胞内局在の解析も進めているが、コロナ感染拡大の影響により一時保留となり、2年目までにプラスミドの構築と局在解析に関する基礎データの取得にとどまった。最終年度である3年目は局在解析を再開する予定である。以上の結果を基に、植物オルガネラtRNAの成熟化と遺伝暗号の翻訳機構の概要を理解し、また、バクテリアとの共通性と相違性を考察する。
3: やや遅れている
実験機器の使用や学外での作業に対する制限のため若干の遅れが生じている。
「現在までの進捗状況」に記載した通り、各酵素タンパク質の植物細胞内局在解析は外部機関での実験が必要である。解析に必要なプラスミド等の構築は一部を除き完了しており、今後はプラスミド構築の完了およびそれらを用いた局在解析の遂行を目指す。RNA修飾酵素やアミノアシル化酵素のリコンビナントタンパク質を用いたin vitro反応系の構築は概ね予定通りに進んでおり、最終年度である3年目は酵素速度論解析の完了と学術会議や学術雑誌での発表を目指す。以上の結果をもとに、植物オルガネラにおける翻訳機構の概要を理解するとともに、バクテリアとの違いを考察する。
コロナ感染拡大の影響により所属機関への立ち入りが制限されたため計画していた実験が遂行されず、また、学術会議や共同研究先での実験、打ち合わせに伴う出張も中止となったため。本年度に使用せず繰り越した予算は、次年度の実験遂行に使用する予定である。
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Journal of Bacteriology
巻: 1 ページ: 00599-20
10.1128/JB.00599-20