研究課題
抗体産生のために、限られた免疫グロブリン(IgH)遺伝子のS領域で、特にAIDに誘導されたDNA切断が蓄積し、クラススイッチが完了する。その際に、RNAiで介入することによりゲノム不安定性が増加する原因として、germline transcriptsが何らかの領域限定性を与えている可能性を考えた。そこで、今年度は、germline transcriptsのRNA-FISHを行い、germline transcriptsが構造体を形成することを確認した。また、S領域のDNAをラベルする方法をCRISPR/Cas9を応用したSIRIUS系を用いたCAS-FISH(既報)を用いて開発し、RNAのラベルとDNAのラベルが共局在することを確認した。今後、その構造体がDNA切断の領域限定性にどのように貢献するのかを明らかにする必要がある。また、試験管内モデルとして、S領域の400bpを切り取った塩基配列をプラスミドに挿入したものを作成し、それにT7RNAポリメラーゼを用いて転写を誘導し、RNAiにより二本鎖DNAのnegative, positive supercoilをモニターする系を確立した。テスト段階ながら、RNAiオリゴやRNaseH, Top1などの添加により、このスーパーコイル状態が変化することを検出している。今後、RNAiオリゴがDNAのsupercoil状態にどのような変化を与えるか、明らかにし、試験管内でRNAiが与える効果が細胞内で起きている現象を説明できる可能性を追求する。
2: おおむね順調に進展している
RNAiで介入することによりゲノム不安定性が増加する原因について二つの可能性を考え、各々について有用なモデル系を確立した。
germline transcriptsのRNA-FISHにより観察されたgermline transcriptsによる構造体形成とS領域のDNAをラベルしたCAS-FISH(既報)によるRNAのラベルとDNAのラベルの共局在から、その構造体がDNA切断の領域限定性にどのように貢献するのかを明らかにする。germline transcriptに対応するプローブを用いたChIRPにより他の分子の集積を検出する。試験管内モデルが明快な結果を示す場合、原子間力顕微鏡でDNA二本鎖の構造の乱れを検出できるか否かを試みる。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件)
PNAS USA
巻: 117 ページ: 11624-11635
10.1073/pnas.1921115117
The EMBO Journal
巻: 39 ページ: e102931
10.15252/embj.2019102931