減数分裂において染色体が正常に分離されるためには、減数分裂前期にDNA二重鎖の切断によって促進される相同染色体間の交叉が正常に形成されることが必要である。そのためには、多すぎず、少なすぎない数の二重鎖切断がDNA切断酵素SPO-11によってつくられることが必須である。そこで本研究では、生殖細胞が非常に豊富な線虫をモデル生物として、ヒトまで高度に保存されている脱リン酸化酵素Protein Phosphatase (PP4) と、それに拮抗するキナーゼによる、基質のリン酸・脱リン酸化調節が、減数分裂前期における「ちょうどよい量のDNA切断」をつくりだすという仮説をたて、モデル生物線虫を用いてこれを検証した。結果的に、ATRキナーゼとPP4ホスファターゼが拮抗しながら、DSB-1のリン酸化量を調節することで、DSB-1の二重鎖切断を促進する活性を調節しているとことを示した。この研究結果は、2022年にeLife誌に発表した。
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