研究課題/領域番号 |
19K06487
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北畠 真 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (10321754)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リボソーム / 品質管理 / ユビキチン / RNA |
研究実績の概要 |
初年度はリボソームに結合することの知られているタンパク質(リボソーム構成要素を除く)を1つずつ無細胞翻訳系により35S存在下で合成し、機能不全リボソームへの選択的ユビキチン化を行うE3リガーゼ(Mms1-Rtt101-Crt10複合体)への結合を順次モニターする実験を幅広く行った。その結果、これまでこの複合体への相互作用が報告されているいくつかの因子に加え、機能未知のリボソーム結合タンパク質が非常に安定的にこのE3複合体へと結合することを見出した。 さらにこの「結合因子」の性質を解明するため、この因子を大腸菌でリコンビナントとして発現させて精製した。E3リガーゼ複合体の構成因子であるMms1以下の3因子について、短い(およそ200-300アミノ酸くらい)断片に分割してそれぞれを無細胞翻訳系による合成を行い、「結合因子」がE3複合体のどこに結合しているのか、詳細の追求を行った。以外にもこの結合因子はE3複合体の特定の部位に結合しているのではなく、どの部位にも弱いながらはっきりとした結合力を示しており、「ゆるい」認識による結合をしていることが示唆された。 「結合因子」については、すでにその遺伝子破壊株がリボソームの品質管理機構を喪失していることを明らかにしており、細胞がリボソームの機能を検知するために重要な役割を果たしていることが強く示唆されている。今後この因子の役割解明をさらに進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の因子の詳しい性質がわかりつつある。さらに有望な新たな因子の候補もスクリーニングから示唆されてきており、目的の達成に大きく寄与すると期待されている。
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今後の研究の推進方策 |
「結合因子」の詳細な役割を解明するためには、リボソーム上での位置を詳しく解析するべきである。そのためにUVクロスリンクによりリボソームRNA上に架橋した上で、結合部位のRNAをシークエンスする、CRAC法を行う準備を進めている。すでに予備的な成果が得られつつある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、当該年度中に論文を一報作成し、英文校正や投稿料までを支出することを予定していたが、当初予定していた解析が完了に至らず、次年度に持ち越しとなった。ひとつの図をのぞき、論文の草稿自体は完成しており、期待した結果が出た場合には次年度の早い時期に投稿が可能になると期待している。 また、データ収集のために学生アルバイトの新規雇用や、解析用のPCの購入などを計画していたが、これらについても、年明けからのコロナウイルス問題の影響により、当該年度での達成ができなかった。これらの計画については次年度での実施へまわすよう変更する。 次年度ではこれらの雇用・データ解析・論文投稿を、当初の実験計画と並行して(上積みして)行う計画であり、現時点では全体としての研究計画に遅延は生じないと見込んでいる。
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