本年は研究成果のとりまとめを目標とし、過去のデータの再集計および必要データの再取得、論文の作成を行った。また、本プロジェクトから派生した技術論文についても作成と投稿を行い、こちらについては出版に至った。 プロジェクトのデータについては、機能不全リボソームの分解に先立ってさまざまな必要因子のノックアウト(ユビキチン化に必要なE3リガーゼ構成因子のMms1やRNA分解に必要なSki7等)または発現阻害(タンパク質分解に必要なCdc48やプロテアソーム、RNA分解に関わるRNAエキソソーム構成要素であるSki6など)により、変異リボソームを80Sまたは60S粒子の形で安定化させた上で、生化学的に精製し、内容物の再点検を行った。特に80S粒子において含まれるtRNA分子について情報が得られていなかったため、重点的に解析を行った。 ノザンブロッティングにより、開始Met tRNAが比較的多く80Sに含まれていること、他のtRNAは(野生型の80S粒子の場合に比較して)特に量が増えも減りもしていないこと、などが明らかになった。この結果は機能不全リボソームが分解前に開始コドン上で停滞しており、A-siteにもP-siteにもtRNAを含んでいる(P-site側に開始Met tRNA)という想定と一致している。以上の結果より25S NRDの分解が開始される際に、リボソームがmRNAを含んでいること、開始コドン上まで到達していること、などが示された。 ここまでの解析をまとめた論文の執筆まで完了しており、現在投稿中である。
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