(a)紫外線照射によるR-loop蓄積に対するDGCR8の役割: DGCR8が関わるTC-NER経路はR-loopをDNA二本鎖切断(DSB)に変換し、DNA修復を誘導する。そこでDSBを認 識するgamma-H2AXに対する抗体で、U2OS正常細胞、DGCR8-KO細胞、S153Aノックイン細胞におけるDSB形成量を評価した。また癌組織でDGCR8高発現がみられることから、癌遺伝子の発現により蓄積するR-loopの除去に癌細胞がDGCR8を利用している可能性を考えて、癌遺伝子c-Mycの過剰発現細胞の樹立に取り組んだ。 (b)DGCR8によるR-loop制御へのDEAD-boxヘリカーゼの関与: TCGAデータベースを解析した結果、DGCR8増幅がみられる癌の約47%で、R-loopを制御するDEAD-boxヘリカーゼDDX17が増幅していることが判明した。 (c)複製ストレスに対するDGCR8の関与: U2OS正常細胞で紫外線照射によってDNA複製が阻害されたのに対し、DGCR8-KO細胞では阻害が見られなかった。またS153Aノックイン細胞でも同様の結果が得られ、S153リン酸化が紫外線に対する複製制御に関わる可能性が高いと考えられた。さらに複製阻害に必要なDNA損傷チェックポイントへの影響を調べた結果、S153Aノックイン細胞ではCHK1-Ser345リン酸化が十分に持続せず、一方でR-loopのプロセシングに起因する可能性があるATM活性化が見られることが分かった。 以上のようにDGCR8及びSer153リン酸化が紫外線により蓄積するR-loop除去とそれに伴う複製ストレスに関わることを示す知見が得られた。
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