研究課題/領域番号 |
19K06494
|
研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
三好 智博 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (60534550)
|
研究分担者 |
石津 大嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40574588)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Argonaute / DNA複製阻害 / プラスミド |
研究実績の概要 |
原核生物から真核生物まで様々な生物種の細胞でArgonauteタンパク質は発現している。真核細胞ではRNA干渉やmiRNA経路の中心的な役割を担っているが、原核細胞における機能は、よくわかっていない。申請者は、原核細胞において、Argonauteが小分子RNAをガイド分子として塩基配列依存的に標的DNAと結合することにより、DNA interferenceを誘導する細菌特有の新規メカニズムを発見した。これらの結果から、真核生物では、標的をRNA分子とし、原核生物では、標的をDNA分子とすると考えられている。本年度の研究では、この新しく発見された新規メカニズムである原核ArgonauteのDNA interference活性による微生物DNAに対する影響に着目して研究を進めた。 光合成細菌であるRhodobacter sphaeroidesのArgonauteタンパク質(RsAgo)を発現させるためのプラスミドを、大腸菌に導入し大腸菌細胞の中でArgonauteを発現させた。大腸菌に はArgonaute遺伝子がコードされていないため、この実験系により、RsAgoの細胞中での役割を明確にする。大腸菌は桿菌であるが、RsAgoを発現させた大腸菌は、細胞の全長が伸長した。一方で、ガイド鎖が結合できないRsAgo変異体を発現させた場合、この伸長変化は見られなかった。この細胞の形状変化は、抗生物質であるシプロフロキサシンを添加した場合と同様であった。シプロフロキサシンは、ニューキノロン系の抗生物質であり、細菌のDNA複製に必要なDNAジャイレースやトポイソメラーゼIVの機能を阻害する。以上のことから、RsAgoは、ガイド鎖の情報を元に細胞中のDNA複製を阻害していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、Argonauteの機能の完全理解に向けて「ファージ感染」「プラスミド獲得」「トランスポゾンン活性」に対する原核Argonauteによる抑制メカニズムを 明らかにする予定であり、すべての機構のベースとなるDNA複製機構にRsAgoが関与していることが明らかとなった。しかし、個別の詳細に関しては、まだ研究が進んでいないので、やや遅れている と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、Argonauteの機能の完全理解に向けて「ウイルス感染」「プラスミドの獲得」「トランスポゾン活性」に対する原核Argonauteによる抑制メカニズムを明らかにする予定であり、前述したように、本年度の研究で「RsAgoによるDNAの複製阻害」に関するメカニズムが明らかとなった。今後の研究の推進方策として、DNAの複製阻害機構をベースに「ウイルス感染」「ファージ感染」と「トランスポゾン活性」に対する原核Argonauteの機能を解明していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該研究を遂行するにあたり、当初の予定より研究の進展が遅れ、物品費が抑えられたため、次年度使用額が生じた。これに関しては、次年度の研究計画に盛り込み、当初の計画と合わせて計画的に遂行する予定である。
|