研究実績の概要 |
Argonauteタンパク質は、真核細胞においてRNA干渉やmiRNA経路の中心的な役割を担っているが、原核細胞における機能は不明である。このメカニズムは、ファージ感染やプラスミドの獲得など外来DNAの獲得に関連するシステムであることから、微生物の病原性の獲得に重要な役割を果たしていると考えられる。さらに、このシステムは全ての原核生物が持っているシステムではなく一部の原核生物に特有のシステムであると考えられている。以上のことから、微生物の病原性獲得について調べることが、本研究の遂行に必要不可欠である。最終年度は、病原性細菌と常在細菌の違いを明らかにするために、ヒトの健康に寄与する微生物の探索と同定を行なった。歯周病は、日本人成人の約80%が罹患しており、様々な全身疾患と関連していることが明らかになってきている。口腔内細菌の中で歯周病細菌の生育を抑制する細菌を見つけるために、溶血性細菌に着目して探索を行なった。我々の口腔唾液中の溶血性細菌の16SrRNA配列を解析した結果、Gemella属に分類される細菌種が多く存在していることが示された。申請者らの解析では、G. sanguinis, G. haemolysans, G. morbillorumの3種類の Gemella属細菌が同定された。さらに、歯周病患者の唾液中では、健常者と比較してGemella haemolysansの比率が特異的に少ないことも明らかとなった。この結果から、G. haemolysansが歯周病原菌の生育を抑制している可能性が示唆された。実際に、G. haemolysansによる歯周病原菌の生育抑制作用も示された。以上のことから、G. haemolysansは口腔内の健康維持に関連する細菌であると考えられる。今後、各細菌においてゲノム上にArgonauteがコードされているかどうか調べる必要がある。
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