本研究は、オーキシンデグロン(AID)法、スクリーニング、ライブセルイメージング、ゲノム科学的手法を駆使した網羅的且つアンバイアス解析を通して、未だその機能が謎に包まれているStructural Maintenance of Chromosomes (SMC) 複合体の1つ、ヒトSMC5/6複合体の全容を明らかにすることを目的としている。本研究は、SMC5/6の機能解析という基礎的な面に加え、SMC5/6の異常に起因する疾患の解明にも繋がると期待される。今年度は昨年度に引き続き、1) SMC5/6複合体と、転写制御に関わる核内ボディとの間の空間的局在に関する細胞生物学的解析、2) デグロンを用いたSMC5/6複合体の不活性化時における、核内ボディ中の転写に対する影響の分子生物学的解析、3) SMC5/6複合体不活性化時の、トランスクリプトームに与える影響の次世代シーケンシング解析を行なった。今後、これらの結果の発表に向けて準備を進める予定である。最後に、本研究に関連する国際共同研究から、SMC5/6の変異に起因する小頭症・低身長症に関する論文1報の発表に至った (LJ Grange et al. 2022)。今後、疾患の診断や治療法の解明に役立つことが期待される。
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