研究課題
本課題では、外部環境やストレスなどの情報が体細胞を介し、いかにして生殖細胞に伝わり、そのエピゲノムに変化を引き起こすのか、その分子メカニズムを明らかにすることをメインテーマとしている。本研究では、ショウジョウバエを用いて、分泌性タンパク質をコードする遺伝子の網羅的スクリーニングを行い、生殖細胞以外の体細胞における遺伝子過剰発現により、次世代のエピゲノム変化をもたらす遺伝子の一群を同定する。そして、同定された候補遺伝子を詳細に解析することにより、生殖細胞のエピゲノム環境が、他組織、器官の体細胞集団によって、どのように遠隔調節を受けているのか、そのストレス依存的制御の分子機構の全容を解き明かすことをめざした。初年度においては、生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子としてすでに同定していたショウジョウバエサイトカインUpd3による生殖細胞エピゲノム調節に関する論文の完成と、新規生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子同定のためのスクリーニング系を確立し実際にスクリーニングを開始することを目指した。本課題初年度において、実際には、論文の投稿とreviewerの要求実験の遂行に時間が割かれ、2番めの遂行がだいぶ送れる事になった。論文に関しては、父親拘束ストレス依存的なエピジェネティック遺伝現象を用いて、拘束ストレスによるストレス情報により誘導される液性因子を同定し、その因子が、生殖系列の細胞に働きかけ、生殖細胞のエピゲノム変化をもたらすことを明らかにし、論文投稿そして、アクセプトをいただくことができた。
3: やや遅れている
本年度は、論文投稿の際のReviewerからの要求実験を遂行することが求められ、それを行うことが、本課題の遂行のうえでも非常に大事だと思い、特に論文を通すことに主眼を置いたため、当初計画した実験を遅らせる必要があった。
今回、最初の大きな課題であった論文のアクセプトが実現できたので、今後、若干計画が遅れてい面があるが、着実にスクリーニングを実行していき、新規の生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子の同定を目指して行きたいと考えている。その際の、最大の問題点は、新型コロナウイルスによる世界規模の影響のため、世界中のショウジョウバエストックセンターが機能しておらず、その回復なしにはなかなか最初の取り組みにかかることができないのが現状である。そのため、他にも新規生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子同定の方法を考え実行していかないと行けない可能性がある。現在、いくつかの環境ストレスが次世代のエピゲノム変化に影響することがわかっており、そのストレスにより、発現誘導する液性因子のスクリーニングをqRTーPCRベースで同定できれば、その因子の生殖細胞のエピゲノム変化への関与を探っていきたいと考えている。
今回、論文のアクセプトが年度末になり、実際の掲載が次年度になったため、論文掲載料の次年度に手続きを行うことになった。論文の掲載時期が年度をまたぐ結果となり、もし、今年度中に掲載料支払いが生じても対応できるよう、執行額を抑えたため、結果として、このような結果となった。そのため、繰り越した予算の大半は、論文掲載料に当てられる。
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Communications Biology
巻: 3 ページ: 1
10.1038/s42003-020-0935-z