研究課題
近年、環境変化や摂取栄養、感染、精神的ダメージなど、様々な外的、内的ストレスが、世代を超えて、エピゲノム環境に影響することが、多くのモデル動物を用いて明らかとなってきている。親に対するストレスが、子のエピゲノム状態に影響するためには、個体が受容したストレス情報が、生殖細胞に伝わる必要がある。本研究計画では、ショウジョウバエの遺伝学的手法を用いて、生殖細胞以外の体細胞で、分泌性タンパク質を過剰発現させ、世代を超えたエピゲノム変化を誘導する候補遺伝子の探索を、網羅的に行い、生殖細胞エピゲノムの遠隔調節機構の遺伝的基盤を明らかにし、その全容を明らかにすることを目標とした。そこで、本研究では、ショウジョウバエを用いて、分泌性タンパク質をコードする遺伝子の網羅的スクリーニングを行い、生殖細胞以外の体細胞における遺伝子過剰発現により、次世代のエピゲノム変化をもたらす遺伝子の一群を同定し、同定された候補遺伝子を詳細に解析することにより、生殖細胞のエピゲノム環境が、他組織、器官の体細胞集団によって、どのように遠隔調節を受けているのか、そのストレス依存的制御の分子機構の全容を解き明かすことを目指した。今回、転職により、本研究費による研究をこれ以上続けられなくなったが、本研究費による成果としては、まず、生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子として同定していたショウジョウバエサイトカインUpd3による生殖細胞エピゲノム調節に関する研究を完成させることができた。そして、新規生殖細胞エピゲノム遠隔制御因子同定のためのスクリーニング系を確立した。また、今後スクリーニングにおいて明らかにされた因子によるエピゲノム変化が、次世代のどのような表現型に影響するのかを詳細に調べるため、個体別活動量及び発生段階の詳細を自動的に記録できるシステム構築を行うことができた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Communications Biology
巻: 3 ページ: 1
10.1038/s42003-020-0935-z
eLife
巻: 9 ページ: e58630
10.7554/eLife.58630