分裂期染色体構築において中心的役割を果たすタンパク質複合体コンデンシンIの作用機序の解明を目指し、五つの組換えサブユニットから再構成した複合体を用いて解析を行なった。各サブユニットを欠失させたサブ複合体に加えて、サブユニットのサブドメインのアミノ酸置換変異および部分欠失変異を導入した各種変異型複合体を作成し、各サブユニットの機能解析を進めた。機能解析の一つとして、前年度に引き続き変異型複合体のループ押出し活性を調べるための一分子解析(ループ押出しアッセイ)をおこなった(名大・西山グループとの共同研究)。その結果、CAP-Hサブユニットのアミノ末端領域のドメインを欠失させた変異型複合体ではコンデンシンIによるループ形成の頻度が上昇しており、CAP-Hのアミノ末端領域がコンデンシンIとDNAとの相互作用によるループ形成の初期段階を制御していることが示唆された。ループ押出しアッセイによる解析に加えて、各種変異型複合体のATP加水分解能を調べるためのATPaseアッセイ系を確立した。このアッセイ系を用いてサブ複合体を含めた変異型複合体のATPase活性を測定し野生型ホロ複合体と比較することにより、ATPase活性制御における各サブユニットおよび各ドメインの役割を検証できるようになった。さらにこれらループ押出しとATPaseの両者のアッセイ系は、進化的に保存された二種類のコンデンシンのうちもう一方のコンデンシンIIの解析にも適用・拡張することができた。実際、コンデンシンIIのATPase活性がHEATサブユニットの一つCAP-G2により負の制御を受けることを明らかにした。カエル卵抽出液と組み合わせた解析と合わせて、コンデンシンIだけでなくコンデンシンIIを加えたより幅広くかつ多階層にわたるコンデンシン活性の比較検討が可能となった。
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