研究課題/領域番号 |
19K06502
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
波平 昌一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (60379534)
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研究分担者 |
新木 和孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60514255)
齋藤 裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60721496)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 神経細胞 / DNMT1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マウスとヒトの神経細胞(ニューロン)において、分裂を終えた細胞での機能が未知である維持型DNAメチル化酵素DNMT1に着目し、その機能解明と、精神・発達障害との関連を明示することである。2019年度はタンパク質相互作用解析を基盤として、DNMT1をエンハンサー領域へリクルートする分子を同定し、マウスニューロンにおけるDNMT1によるエンハンサー領域のメチル化制御機構のメカニズムを解明することを目的として研究を進めた。その結果、ニューロンにおいてDNMT1と結合するタンパク質を新たに数個同定することができた。同定されたタンパク質の多くはこれまでDNMT1との相互作用が報告されていない新規なものであり、特にその中にはエンハンサー領域に結合することが報告されているクロマチン構造変換制御タンパク質もあった。この結果は、DNMT1がそれらのタンパク質との相互作用を介してエンハンサー領域のDNAメチル化の制御を行っていることを示唆している。 更に、ニューロン発達におけるDNMT1の役割を詳細に解明することを目的に、神経前駆細胞からDNAを採取し、成体ニューロンとのDNAメチル化の全ゲノムレベルの比較解析を実施した。その結果、ニューロンの発達過程でゲノム領域ごとにDNMT1が異なる役割を示すことがわかった。上記の相互作用タンパク質の結果と合わせて考慮すると、DNMT1はゲノム領域ごとにそれぞれ異なるタンパク質複合体を形成し、ニューロン発達依存的なDNAメチル化パターンの制御を行っていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はDNMT1の相互作用タンパク質の同定を目標として研究を実施し、エンハンサー領域への結合が報告されている新規相互作用タンパク質を同定することができた。さらに、神経前駆細胞の全ゲノムレベルのDNAメチル化解析の実施により、ゲノム領域ごとにDNMT1の役割が異なるという新知見も得ることができた。従って、2019年度の目標は概ね達成できたことから上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度の解析から得られた結果の再現性を得るとともに、DNMT1の相互作用タンパク質のChIP解析などを実施する。これにより、DNMT1の各ゲノム領域におけるDNAメチル化制御機構の詳細な分子メカニズムを解明する。更に、ヒト神経幹細胞より分化したニューロンを用いることで、ヒトのニューロンにおけるDNMT1の役割についても解析する。 DNMT1を過剰発現するトランスジェニックマウスについては、現在繁殖が遅延している。今年度中に繁殖の改善を実施し、改善され次第行動解析を実施する予定である。
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