研究課題/領域番号 |
19K06505
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 勲 北海道大学, 先端生命科学研究院, 名誉教授 (70093052)
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研究分担者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テロメアブーケ形成 / 減数分裂 / リボソーム生合成因子 / Ebp2 / Rrs1 / 染色体 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
リボソームは、蛋白質の合成という、生命にとって基本的に重要な役割を担う粒子である。従って、そのリボソームを合成する生合成因子は、生命を維持するのに必須の因子である。最近、リボソームの前駆体である90Sの成熟に関わる生合成因子Epb2、Rrs1が、有性生殖細胞の減数分裂においてテロメアブーケと呼ばれる染色体の集合体の形成に必須な因子であることが発見された。また、我々は、Rrs1とRpf2の複合体の構造解析によって、そのEpb2、Rrs1の2つの因子に加えて、もう一つの生合成因子Rpf2もこの過程に関与する可能性を示した。そこで、本研究では、リボソーム生合成因子Rrs1, Rpf2,Ebp2とテロメアアンカー蛋白質Mps3との相互作用の詳細を構造生物学的に解析し、これらの因子による染色体テロメアの集合開始の制御機構を解明する。 令和元年度では、Native-pageを用いた実験によってRrs1-Rpf2、Ebp2、Mps3(NTD)4者複合体の形成を確認できたので、令和2年度には、4者間の定性的な相互作用解析の準備を進めた。また、Ebp2のパートナーBrx1がテロメアの集合開始の制御に関与するかどうかについて実験を進めた。Brx1の大量調製が難航したが、いくつかの発現コンストラクトを構築し、Brx1の大量調製の可能性を見出した。さらに、Rrs1-Rpf2、Ebp2、Mps3(NTD)4者複合体のSAXS測定を行い、複合体のモデルを得た。今後、4者複合体の定量的な相互作用や、Brx1を加えた5者の関係を明らかにし、構造解析の結果を加え、テロメアの集合開始の制御機構の解明を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、 1.Rrs1、Rpf2、Ebp2、Mps3(NTD)それぞれの大量調製を行い、調製量と純度を向上するため、精製条件を最適化した。特に、不安定なEbp2の大量調製が改善された。今後、SPR法を用いて定性的な相互作用解析を行う。 2.Brx1がテロメアの集合開始の制御に関与するかどうかを明らかにするため、Brx1の大量調製を行った.実験は難航したが、Brx1単独、異なる3種類のEbp2-Brx1共発現ベクターを試みた結果、Brx1大量調製の可能性を見出した。今後、調製条件をさらに検討し、相互作用の解析を進めていく。 3.Mps3(NTD)の結晶構造解析については、昨年に引き続きCo-cage-1を用いて結晶化の再現性と展開を行い、新たな結晶化条件を見つけた。 以上、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.SPR法を用いて、Rrs1-Rpf2、Ebp2、Mps3(NTDの相互作用の定性的な解析を行う。 2. Ebp2のパートナーBrx1の大量調製条件を改善し、Brx1がEbp2、Mps3(NTD)、Rrs1-Rpf2、Rrs1-Rpf2-Mps3(NTD)、Ebp2-Rrs1-Rpf2-Mps3(NTD)との相互作用を調べ、Brx1がテロメアの集合開始の制御に関与するかどうかを明らかにする。 3.Mps3(NTD)の結晶条件を最適化し、結晶構造解析を進めていく。 4.上記1, 2の結果に基づいて、機能する複合体についてネガティブ染色電子顕微鏡解析、クライオ電子顕微鏡解析、SEC-SAXS解析などの方法を用いて、構造解析を行い、各因子の結合による動的な構造変化を明らかにし、最終の目的である、テロメアブーケ運搬開始のスイッチ機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(状況)2020年度は、相互作用解析ための、安定で純度の高い試料を得るための大量調製に集中し、また構造解析のためのデータ測定 (遠隔測定)や、試薬、実験器具類の購入については節約に努めた結果、約50万円未使用残高が生じたが、これを2021年度の研究計画であるSPRによる相互作用解析に使用する予定である。 (使用計画)2021年度の助成金100万(2020年度50万円、2021年度50万円)のうち、一般試薬および結晶化用試薬類、ガラス器具類物品費として50万円、学会参加費用として20万円、その他、論文の英文校正や、論文投稿のための30万円を計上する。
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