研究実績の概要 |
リボソームは、蛋白質の合成という、生命にとって基本的に重要な役割を担う粒子である。従って、そのリボソームを合成する生合成因子は、生命を維持するのに必須の因子である。最近、リボソームの前駆体である90Sの成熟に関わる生合成因子Epb2、Rrs1が、有性生殖細胞の減数分裂においてテロメアブーケと呼ばれる染色体の集合体の形成に必須な因子であることが発見された。また、我々は、Rrs1とRpf2の複合体の構造解析によって、そのEpb2、Rrs1の2つの因子に加えて、もう一つの生合成因子Rpf2もこの過程に関与する可能性を示した。そこで、本研究では、リボソーム生合成因子Rrs1, Rpf2,Ebp2とテロメアアンカー蛋白質Mps3との相互作用の詳細を構造生物学的に解析し、これらの因子による染色体テロメアの集合開始の制御機構を解明する。 令和3年度では引き続き、Rrs1-Rpf2、Ebp2、Mps3(NTD)4者複合体の形成についての実験を進めた。令和2年度に3者複合体(Rrs1-Rpf2-Mps3(NTD))とEbp2を用いてNative-pageで4者複合体の形成を確認したが、その4者複合体のバンドの曖昧さがあったため、本年度はMP(Mass Photometer) 法を用いて(RefeynOneMP)、3者と4者のサンプルを測定し、それぞれ理論値の+10%程度の109、149kDaの分子量の見積を得た。Epb2を固定したSPRの相互作用解析によって、Ebp2とRrs1-Rpf2の解離定数Kd = 9.02 mM を見積もることができた。また、難航していたEbp2とパートナーBrx1の共発現による大量調製に成功した。Native-page の相互作用解析は、Brx1はEbp2とRrs1-Rpf2およびMps3(NTD)との相互作用に影響を加えないことを示唆した。
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