研究課題/領域番号 |
19K06511
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
松浦 能行 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (10402413)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | X線結晶解析 |
研究実績の概要 |
低酸素環境にある固形癌のがん細胞では、その劣悪な環境に適応するために、さまざまな遺伝子の発現が誘導されており、その結果、がんの悪性化が進展する。低酸素誘導因子1 (HIF-1)は、低酸素ストレス応答を司るマスター転写因子である。HIF-1はアルファサブユニット(HIF-1alpha)とベータサブユニット(HIF-1beta)から成るヘテロ2量体である。大多数のがんにおいて、HIF-1alphaが過剰発現しており、HIF-1alphaの核移行(細胞質から核への能動輸送)は、転写因子HIF-1による標的遺伝子群転写活性化のために必要不可欠である。これまでに、HIF-1alphaの核移行のために必要なシグナル配列(核移行シグナル)が同定されており、本研究では、核移行受容体とHIF-1alpha核移行シグナル(野生型)の結晶構造を解き、高分解能で構造精密化した。また、核移行シグナル内部に変異が入った結果、輸送シグナルとしての機能が損なわれるとの報告があるHIF-1alpha変異体と核移行受容体の複合体についても結晶構造を解き、高分解能で構造精密化した。これらの高分解能結晶構造の比較と結合自由エネルギーの計算結果を、変異体を用いた機能解析の実験データと照らし合わせることにより、核移行シグナルの構造機能相関の理解を深める知見を得た。得られた研究成果を論文にとりまとめ、発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生理的に重要なタンパク質複合体の形成に関わるタンパク質間相互作用の理解を深めるには、多面的な検討が必要である。本研究では、シンクロトロン放射光を利用して解いた、複数の新規結晶構造の構造比較と、計算機を用いたインシリコの解析結果から、がんに関わる重要なタンパク質について、機能的に重要なシグナル配列の構造機能相関に関する興味深い知見を得ている。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
がんの発症と進展には数多くのタンパク質が関わっている。今後は、翻訳後修飾で機能が制御されているタンパク質など、がんに関わる興味深いタンパク質群について、構造と機能の研究を、さらに推進する。たとえば複合体の構成要素のリン酸化によりタンパク質複合体の形成や解離がどのような影響を受けるのかについて、高分解能でのタンパク質複合体構造解析や、計算機を用いた相互作用解析など、複合的解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初想定したほど、物品などの購入に費用がかからなかったため。 使用計画:試薬・消耗品などに必要な額を使用する。
|