研究課題
大腸菌のペリプラズム内において,急激なpHの低下に応答して形成される酸変性構造を分子シャペロン機能実現に駆使する2種類の分子シャペロン,HdeAとHdeBに注目し,本研究では両者が活性を示す酸変性構造からアミロイド線維を形成する特徴に注目,その線維形成反応について溶液条件に応じて反応の特性を詳細に解析し,得られたデータを元に,ポリペプチド鎖が天然構造,変性構造,アミロイド線維構造の3者間をダイナミックに遷移する様子を観察し、その裏付けとなる分子機構の解明を試みた。研究期間最終年である令和3年度には主要な研究実績として以下のものを挙げる。1.HdeAの「可逆線維化反応」から「不可逆線維化反応」への性質変化:HdeA及びHdeBの低pH条件における線維形成反応は「可逆」;即ち溶液のpHを中性に調整すると線維が解消され、可溶性蛋白質に復帰するユニークな特徴を持つ。本年度我々は,HdeAが中性pHで再可溶化しない線維を形成する新しい反応条件を見いだした。詳細に確認したところ,HdeAの線維化反応は亜鉛イオン存在下で中性pHでも進行し,更にこの線維のαヘリックス含有率が極めて高い事が見いだされた。HdeAにおいて想定外の新たな構造的,動的特性が解明され、今後より詳細な分子機構の解明へと研究を発展させる。2.HdeAの線維化反応に影響を及ぼす低分子の同定と性格付け: HdeAの線維化反応が様々な条件でその特性を変化する性質に注目し,本研究では低分子化合物の添加により線維化反応の制御を試みた。令和3年度では前年度にライブラリーより同定したある低分子化合物がHdeAの線維化を強く促進する事を見いだし、更にその効果が大腸菌のペリプラズムでも再現されることを確認した。今後はこの低分子化合物の鍾愛な作用機構の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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