研究課題/領域番号 |
19K06518
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 武司 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20719447)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リボソーム / RNAポリメラーゼ / 翻訳 / 転写 / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
研究実績の概要 |
セントラルドグマにおいて、DNAに保存された遺伝情報をRNAに写しとる「転写」、その後 RNA上にコードされた核酸配列を、タンパク質を構成するアミノ酸の配列へと変換する「翻訳」は、遺伝子発現の根源を担う重要な過程である。原核生物では、これらの反応は共に細胞質で行われるため、転写、翻訳に関わるマシナリーは空間的に近接し、協調的に働いていることが明らかになりつつある。バクテリア遺伝子発現において、RNAポリメラーゼから新生RNAが表出し始めると、すぐにリボソームがRNA捕まえ翻訳を開始し、RNAポリメラーゼの進行を追いかけることが知られている。リボソームがRNAポリメラーゼを後ろから押し進めることで、バックトラックや停滞を抑制し、効率よく遺伝子発現が行われる。構造生物学分野においては、転写、翻訳のプラットフォームとなる、RNAポリメラーゼ及びリボソーム複合体の詳細が、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡によって精力的に明らかにされた。近年のクライオ電子顕微鏡法の技術革新によって、構造多型を含んだ試料の構造解析が技術的に可能となり、RNAポリメラーゼとリボソームが「Expressome」複合体を形成し、転写と翻訳が共役する様子が明らかにされた。解き明かされた構造から、転写伸長反応中RNAポリメラーゼは、リボソームの30Sサブユニットの溶液側に結合し、リボソームに対する翻訳因子の結合と競合しないことがわかった。つまり、RNAポリメラーゼで合成され表出した新生mRNAを、最初に翻訳するリボソームは、RNAポリメラーゼとの結合を保ちながら、翻訳の4つの素過程「開始」「伸長」「終結」「リサイクリング」を経験することになる。本研究では、新生mRNAを介してRNAポリメラーゼに結合した、リボソーム複合体を、翻訳の素過程を追いながら構造生物学的に解き明かすことを目標とし研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、RNAポリメラーゼ伸長複合体が、翻訳開始複合体に結合し転写されたmRNAが取り込まれる様子を、クライオ電顕単粒子解析法により明らかにした。翻訳開始過程のいくつかのステップに存在する複合体と、RNAポリメラーゼが相互作用する様子をとらえた。構造解析においては多くの構造多型が存在し、それらを画像分類によって構造ごとに振り分け、複合体形成の様子を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在取得されているクライオ電顕構造により、原子モデルの構築を行い、構造変化の様子を詳細に解析する。また、転写に関わる因子にも着目し、データ取得と構造解析を進め、転写と翻訳がカップルする様子を解き明かす。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の移動があったことと、すでに取得したデータの解析に集中したため、実験や測定にむけた支出が抑えられた。今年度はより精力的に実験・測定を行う予定である。
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