研究課題/領域番号 |
19K06519
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 彰良 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (10583891)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | X線結晶構造解析 / tRNA修飾 / アミノアシルtRNA合成酵素 / DNA/RNAポリメラーゼ / 鋳型依存伸長反応 / タンパク質 / 核酸 / 逆向き重合 |
研究実績の概要 |
核酸合成を担う酵素は全て5′-3′方向に塩基伸長するというのは長らく定説であったが、逆向きの3′-5′方向へ塩基伸長する酵素Thg1が発見され注目を浴びている。しかし、なぜThg1には逆方向の塩基伸長活性が現存するのか、その生物学的意義の解明には至っていない。最近Thg1がtRNA以外の多様なRNAを認識することが示唆されているが、未だ生体内RNAは同定されておらず、Thg1がどのように多様なRNAを認識するか不明である。本研究では、ランダムRNAライブラリーからThg1の基質となりうる新規RNAを探索し、Thg1との複合体の構造解析を行うことで、Thg1のRNA認識における多様性を解明することを目的としている。 2019年度は、Thg1の活性を指標としたin vitro RNAセレクション法を確立し、Thg1が活性を示す新規RNAの取得に成功した。得られた新規RNAはサイズおよび予測される2次構造からも、これまで基質RNAとして報告されているtRNAとは全く異なっており、Thg1の新たなRNA認識機構による相互作用が期待される。さらに、大量良性したヒトThg1と新規RNAが複合体を形成することをゲルろ過分析により明らかにした。現在、相互作用の詳細を解析中である。 加えて本年度は、ヒトThg1のtRNAHis成熟におけるヌクレオチド認識機構を解析し、これまで研究されてきた真菌由来Thg1とは異なるヌクレオチド認識機構が示唆された。本成果は学会発表を行い、現在論文投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はin vitro RNAスクリーニングにより新規RNAの取得に成功した。さらに、ヒトThg1および新規RNAの大量調製系を確立し両者が複合体を形成することを明らかにした。加えて、ヒトThg1の機能解析から新たなヌクレオチド認識機構の解明にも成功しており、RNA認識だけでなくヌクレオチド認識の知見も加えることで、Thg1の逆方向塩基伸長活性の生物学的意義のより深い洞察が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、確立した大量調製系にてヒトThg1-新規RNA複合体を大量調製し、X線結晶構造解析に向け結晶化条件の探索を進めるのに加え、複合体のX線小角散乱測定を検討する。加えて、取得した新規RNAに関しても、2次構造や重要配列の同定を目指し解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度はヒトThg1の機能解析も同時に進めており、ヒトThg1-新規RNA複合体の結晶化条件の探索は次年度から開始することになったため差額が生じた。次年度に結晶化に必要な消耗品等を購入する予定である。
|