研究課題
哺乳動物細胞の小胞体において、酸化的フォールディングの触媒や小胞体ストレス応答因子であるIRE1の機能制御能に関わるP5はこれまで構造未知なためその作動原理は不明であった。今回X線小角散乱とSECによる構造解析より、そのN末端に存在するチオレドキシン様ドメインa0が二量体化に関わることを明らかにした。これまで解かれていた結晶構造を基に、新たにa0ドメインに二量体化に重要なLeu-Val adhesive motifを見出した。二量体形成motifとして遺伝子調節に関わるLeu-zipper motifが非常によく知られるが、このmotifはアルファヘリックス2巻きごとに外側に露出したLeu残基同士が平行に接着することで機能を発現する。一方、このLeu-Val adhesive motifはアルファヘリックス1巻きごとに外側に露出したLeu/Val残基同士が逆並行に接着することを見出した。これら接着力をin silico比較すると、20種類のLeu-zipper motifでは-15 から -20 ×10-3 (kcal/mol/A2)程度の範囲の接着力が見積もられたことに対し、Leu-Val adhesive motifは-10 ×10-3 (kcal/mol/A2)であった。したがって、このmotifはLeu-zipper motifよりも接着力が弱く、Leu-zipper motifの母集団から外れ、新規なmotifであることが示唆された。さらに、このモノマー化変異体はartifactな分子間ジスルフィド結合種を生成するだけでなく、部分構造の崩壊を起こしており、細胞内で小胞体ストレスを引き起こしていた。以上の結果は、2021年Structure誌に研究成果として発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
既に本研究計画の内容はStructure誌に発表し、概ね計画以上の進展であると判断できる。
本研究計画を進める上で、新たにP5が液滴に内包されることを発見し、特許として出願した。今後、P5と液滴との関係性について、構造生物学、細胞生物学、両方の側面から明らかにし、その生理学的意義を探求する。
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