研究実績の概要 |
クロマチンは、ヌクレオソームと呼ばれるヒストンとDNAの複合体を最小単位として核内に収納されている。滝沢は、結晶化が困難な試料溶液をグリッド上で急速凍結し観察することのできるクライオ電顕鏡解析を使い、ヘテロクロマチン基本構造やネイティブDNA配列を含むヌクレオソームの3次元構造を明らかにしてきた。クライオ電子顕微鏡解析は、近年様々な技術革新により、画像取得やコンピュータ解析の自動化、高速化が行われてきたが、急速凍結試料グリッド作製には、複合体精製の難しさや凍結条件の最適化など多くの課題が残されている。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いたクロマチン構造解析における急速凍結試料作製の効率化、高品質化および今まで構造解析が難しかったクロマチン複合体や高次クロマチンの可視化を実現するため、クロマチン基盤膜グリッドの作製を目的としている。2020年度は、クロマチン基盤膜グリッドに固定するための多様なクロマチンの作製を引き続き行った。成果として、パイオニア転写因子GATA3とヌクレオソーム複合体構造 (Tanaka, Takizawa et al, Nature Commun, 2020), 自然免疫に関与するcGAS-ヌクレオソーム複合体構造 (Kujirai,...Takizawa et al, Science, 2020)、ヒストンH4メチルトランスフェラーゼSET8-ヌクレオソーム複合体構造 (Ho, Takizawa et al, Life Sci Alliance, 2021)をクライオ電子顕微鏡単粒子解析により明らかにした。また、基盤膜グリッドとして、単層グラフェンを貼ったグリッドの作製を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は、クロマチン基盤膜グリッドに固定するための様々なクロマチンの作製を行った。特に、パイオニア転写因子GATA3とヌクレオソーム複合体構造 (Tanaka, Takizawa et al, Nature Commun, 2020), 自然免疫に関与するcGAS-ヌクレオソーム複合体構造 (Kujirai,...Takizawa et al, Science, 2020)、ヒストンH4メチルトランスフェラーゼSET8-ヌクレオソーム複合体構造 (Ho, Takizawa et al, Life Sci Alliance, 2021)をクライオ電子顕微鏡単粒子解析により明らかにした。解析を行った試料は、クロマチン構造の制御に重要な役割を果たしていると考えられ、これらのクロマチンを基盤膜グリッドに固定することができれば、これらの複合体上に更に結合する様々なクロマチン結合因子をグリッド上で結合させることができ、クロマチン構造の理解が進むことが期待される。また、2020年度は、基盤膜グリッドとして、単層グラフェンを貼ったグリッドの作製を試みた。電子顕微鏡により単層グラフェンがグリッド上に高効率で張られていることを確認した。また、作製できた単層グラフェングリッドにヌクレオソームを結合させることにより、低濃度のヌクレオソームのクライオ電子顕微鏡観察に成功した。
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