研究実績の概要 |
クロマチンは、ヌクレオソームと呼ばれるヒストン8量体とDNAの複合体を最小単位として細胞核内に収納されている。高次クロマチン構造は、翻訳後修飾やヒストンバリアントなどにより制御されており、細胞核内で起こる転写、複製、修復などの様々なイベントと密接に関与していることが分かってきている。クライオ電顕解析は、近年様々な技術革新により、分解能の向上や画像取得、コンピュータ解析の自動化、高速化が行われてきたが、急速凍結試料グリッド作製には、複合体の安定化や凍結条件の最適化など試料ごとに多くの課題が残されている。本研究課題では、クライオ電顕を用いたクロマチン構造解析における急速凍結試料作製の効率化、高品質化および今まで構造解析が難しかったクロマチン複合体や高次クロマチンの可視化を実現するため、クロマチン基盤膜グリッドの作製を目的としている。2021年度の研究実績として、グリッド上の基盤となる単層グラフェンシートをグリッドに貼り、グラフェンシート上にヌクレオソームを吸着させることでグリッド上でヌクレオソームを濃縮することに成功した。また、グラフェンシートをグリッドに貼ることで、ヌクレオソームを化学固定することなく粒子の崩壊を防ぎ、クライオ電顕で観察することが可能となった。加えて、クロマチン基盤膜グリッドに固定するための多様なクロマチンの作製を昨年度に引き続き行った。成果として、ヒト寄生虫であるランブル鞭毛虫のヌクレオソーム構造 (Sato, Takizawa et al, Nucleic Acids Res, 2021), マウスヒストンH3バリアントであるH3mm18を含むヌクレオソーム構造 (Hirai,...Takizawa et al, Nucleic Acids Res, 2022)をクライオ電顕単粒子解析により明らかにした。
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