初年度の時点で,サンプルの大量発現および精製方法の確立と結晶化スクリーニングを試みていたが、構造解析に必要な結晶化には成功していなかった。タンパク質構造を安定化させるため、抗体との共結晶化を行うことにした。抗体作製時に脂質と混合し、リポソーム再構成をすることでより構造を維持した抗原から構造認識抗体を得られるような工夫を施した。マウス腹水から結合可能性のある抗体候補を複数得ることができた。複数の抗体が得られたため、その中からサンプルと安定した強い結合を示す抗体を選択するため、それぞれをFab化後、サンプルと混合してゲル濾過することで単一の結合サンプルピークが得られるものの選別を行った。小スケールでの結合確認の結果、目的サンプルと十分な結合を示すFab化抗体が複数作製できたことを確認した。結合が確認できた抗体についてスケールを上げて、結晶化を行った。脂質キュービック法やバイセル法などの膜タンパク質輸送体に適した結晶化法を使用して結晶化を試み、微小結晶を得ることに成功し、回折実験に供した。いくつかの結晶化条件で予備的な低分解能データを得たが、分子置換可能なレベルのデータではなかった。それぞれ結晶化条件のリファインを行ったものの、分解能を向上するには至らず、立体構造の決定はできなかった。本研究期間中に全てのFab化抗体との組み合わせでの結晶化を実施できていないため、引き続き組み合わせを変え結晶化を行っていく必要があると考えている。
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