マラリア感染症は早急に人類が克服すべき疾 病であり、発展途上国を中心に毎年およそ3億人が感染し、年間約50万人の命を奪っている。マラリア感染症を引き起 こすマラリア原虫はアピコンプレックス門に属し、細胞内に取り込んだ紅色植物の葉緑体が退化したと考えられている四重包膜に囲まれた二次共生色素体:アピ コプラストを持つ。アピコプラストはマラリア原虫の生存に必須であり、新たな創薬ターゲットとして注目されている。アピコプラストは独自のゲノムDNAを 持っているにもかかわらず一部の遺伝子しか残していない。すなわちアピコプラストで使用されるタンパク質 (アピコプラストト蛋白質)の大部分は核ゲノムDNA にコードされている。よって、アピコプラスト蛋白質は小胞体で合成された後、本研究で研究対象とするTic22タンパク質など様々な膜透過関連タンパク質の助 けをかりて四つの膜を通過しアピコプラスト内へと運ばれていく。そこで本研究では、アピコプラスト内へと輸送されるタンパク質と膜透過関連タンパク質 Tic22タンパク質との相互作用の解明を目指している。 これまで、表面プラズモン共鳴法やNMRスペクトル解析により、Tic22タンパク質がアピコプラスト内へと運ばれる情報が書かれたシグナル配列やトランジット配列ではなく、タンパク質本体を認識していることを明らかにしてきた。2022年度においてはさらに詳細な情報を得るために、タンパク質本体を10残基と5残基のペプチド鎖に分断し、インシリコスクリーニングによりTic22に結合する領域の探索を行なった。ここから得られる情報を基にペプチドを合成し、バイオレイヤー干渉法によりTic22タンパク質との相互作用を確認した。
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