研究実績の概要 |
近年、タンパク質の立体構造解析において、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析が広く用いられている。単粒子解析では、溶液中でのタンパク質の2次元画像を再構成することによって3次元立体像を構築する。技術の発展によって近原子分解能が実現されてきたが、ドメイン運動を起こすようなタンパク質を対象とした場合、揺らぎの大きい部分あるいは柔らかい部分で局所解像度が低下してしまう。そのため、X 線結晶構造解析や NMR などで得られた構造を密度マップに重ね合わせ、フレキシブル・フィッティング法を用いて構造を最適化しようとすると、低解像度領域で構造が大きく崩れてしまう問題がある。本研究では、このような問題を解決することを目的として、局所解像度の異なる複数の電顕マップを逐次解析して立体構造を構築するための新しい方法論を開発した。マスキング処理によって得られた複数の電顕マップを解析する連成フレキシブル・フィッティング法を、本研究チームで開発している分子動力学計算ソフトウェア GENESIS を用いて実現した。水溶性タンパク質だけでなく、膜タンパク質でも実現できるように、陰的溶媒モデル (GBSA, EEF1) および陰的膜モデル (IMM1, IMIC) を新たに GENESIS に導入し、水中、膜中、ミセル中での計算コストを抑えたフレキシブル・フィッティングを可能にした。
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