研究課題/領域番号 |
19K06534
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
堀 哲哉 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 専任研究員 (20344054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GPCR / インバースアゴニスト / ベンザミジン / 合理的設計 |
研究実績の概要 |
Gたんぱく質共役型受容体(GPCR)は、重要な創薬ターゲットである。今までの研究結果から、ベンズアミジン基を含む化合物は、GPCRの膜貫通ヘリックス構造内部に存在するNa+-水分子クラスターを模倣して、不活性状態のGPCRの立体構造を安定化し、逆作動薬となりうることを明らかにした。GPCRは約800種類存在し、ベンズアミジン派生物も数多く存在する。そこで、ベンズアミジン基を含む化合物の合理的設計方法論確率を最終目標として、研究を始めた。 本年度は、各GPCRに対してどのベンズアミジン派生物が有効に作用するのかを実験的に確認する実験を行った。具体的には、196種のGPCR、7種のベンズアミジン派生物を対象に、それぞれのベンズアミジン派生物が各GPCRのGタンパク質活性能を抑制するか否か確認するための細胞実験を行った。 濃度2種(1mM, 1uM)のベンズアミジン派生物で実験を行い、1mMでの抑制率が1uMの抑制率を上回ることを抑制の定義とした。まず、196種のGPCR中、158種のGPCRでリガンドが無い状態でのGタンパク質活性能(基底状態の活性)が確認できた。158種のGPCRに対して、151種のGPCRで少なくとも1つのベンザミジン派生物によりGPCRの基底状態の活性は抑制された。つまり基底状態が確認されたGPCRのうち、95.6% のGPCRでベンザミジン派生物により基底状態の活性が抑制された。現在GPCRのサブファミリーやGタンパク質の種類、アミノ酸配列別に、ベンズアミジン派生物の種類や活性抑制能の程度などのデータ解析を行っている。またいくつかのGPCRについてはベンズアミジン派生物の濃度依存的な抑制も確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベンズアミジン派生物が大部分のGPCRの活性を抑制することは今まで報告されておらず、本研究で初めて明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はすべてのベンズアミジン派生物に対して2種の濃度で抑制実験を行い抑制の有無を確認した。今後いくつかのGPCRについて複数濃度の派生物で抑制定数を測定する。 ベンズアミジン派生物と既存のアンタゴニストを結合させ、インバースアゴニスト活性を有することを細胞アッセイで確認する。 また、現在一種類のアッセイで実験を行っているので、今後Gタンパク質に種類によってはcAMP検出実験により、ベンズアミジン派生物が同様にGPCRのGタンパク質活性を抑制するか否か確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞実験が順調に進んだために、当初見積もった費用よりも少ない額で結果が出た。本年度は、より精密な実験を行うこととする。
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