GPCRの負のアロステリック因子であるナトリウムイオンの活性を模倣することにより、ベンズアミジン化合物がGPCRの逆作動薬になるかどうかを確認した。ナトリウムイオン結合部位は膜貫通ヘリックス領域のオーソステリック結合部位に隣接している。55種の不活性状態のGPCRの結晶構造のうち、両結合部位は22種で空間的に連続しているが、27種では繋がっておらずナトリウムイオン結合部位は閉じた分子内キャビティー構造をしている。閉じた構造をしているGPCRでもベンズアミジン化合物が活性抑制をするのかどうか確かめるのが本研究の主な目的である。 研究期間を通して、(A)ナトリウムイオン結合部位が閉じているβ1アドレナリン受容体の既存の逆作動薬にベンズアミジン基をつなげた化合物がβ1受容体に結合することを確認した。(B)5-HT2Bセロトニン受容体は、7種のベンズアミジン派生物によりアゴニスト依存性・基底状態いずれの活性も抑制された。(C)同7種の派生物に対し、192種のGPCRに対する活性抑制実験を行った。159種のGPCRで基底状態の活性が観察され、うち153種のGPCRで少なくとも一つの化合物によって活性が抑制された(96.2%)。ナトリウムイオン結合部位の開閉の違いによって、いずれの化合物についても活性抑制度に特に特徴が見られなかった。つまり、両部位が繋がっていなくても、ベンズアミジン化合物はナトリウム結合部位に結合してGPCRの活性を抑制することができると考えられる。 最終年度は既に測定が完了したデータの解析とまとめを行い、論文作成を行った。
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