研究課題/領域番号 |
19K06535
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金田 亮 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 上級研究員 (40423131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粗視化分子シミュレーション / ベイズ最適化 / 能動学習 / 機械学習手法 |
研究実績の概要 |
Cryo-EMやXFEL等、近年の実験技術の発展により生命活動を担う様々な生体高分子の構造が解明されつつあるが機能発現に重要な全ての準案定構造を精度良く取得できている訳ではない。生体分子の機能発現の機序を明らかにする為には、化学反応に伴うms~sスケールの長時間ダイナミクスを調査する必要がある。しかし現在の全原子MDシミュレーションでは計算コストの観点から機能発現の全行程を調査する事が難しい為、自由度を落とした粗視化分子シミュレーションによるアプローチが重要となる。特に構造ベースの粗視化分子モデルにより、参照構造周りの微細な構造揺らぎや、実験的に既知の構造間の遷移動態を調査する事が可能となってきている。しかし、参照構造から遠く離れた未知の構造群を幅広くサンプリングする粗視化分子モデル(シミュレーション技法)は存在しなかった。 そこで本年度においては、既知の(単一の)構造を起点にして、実験的に未知の準安定状態の候補構造を効率的にサンプリングする事が出来る新しい粗視化モデルの構築を目指した。具体的には既知構造を用いて非常に短い全原子MDを遂行し、そのトラジェクトリから残基ペア間の揺らぎの相関情報を評価し、その相関に応じて残基間の相互作用強度を決定する新しい粗視化分子モデルを構築した。(パラメータの決定はベイズ最適化等の機械学習手法を適用し効率的に遂行した)。このモデルにより参照構造から比較的離れた構造アンサンブルも効率的にサンプリング出来る様になった。得られた粗視化分子構造から全原子構造を再構成する事で、実験的に取得が難しい準安定状態に対する効率的な候補構造のモデリングへの可能性が開くと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、新しい粗視化分子モデルの構築により幅広い構造サンプリングを実現したが、研究実施計画で予定していた粗視化AI力場構築が遅れている為。
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今後の研究の推進方策 |
比較的小規模の蛋白系(数種)に対して長時間の全原子MDシミュレーションを遂行し、得られた構造アンサンブルと対応するエネルギーを学習データとする事で汎用性のある粗視化AI力場の構築を目指す。可能であれば、粗視化AI力場を分子モーターの一種であるアクチン-ミオシン分子系に適用し、化学反応に伴う分子内のアロステリックな構造変化機構の調査及びエネルギー論の展開をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた粗視化AI力場構築の進捗が遅れ一部の学会の参加費、旅費等が不要となった為。今後のシミュレーション計算で必要となる計算機や解析で発生するデータを保存するストレージ等の消耗品費に使用する予定。
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