研究課題/領域番号 |
19K06538
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松井 美紀 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00455784)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘム |
研究実績の概要 |
本研究は、補欠分子族であるヘムがシグナルとして、天然変性タンパク質の機能を直接調節し、細胞応答過程を制御できることを明らかにすることを目的とする。従来ヘムは、タンパク質と安定に結合して機能すると考えられてきた。転写因子Bach2は、B細胞から形質細胞への分化を抑制する。これまでに申請者は、ヘムがBach2に直接結合することで、形質細胞分化を促進する現象を発見した。またBach2は、決まった高次構造をとらない「天然変性タンパク質」であり、ヘムが濃度依存的にBach2の構造状態を変化させることを明らかにした。本研究課題では、ヘム依存的に相互作用が変化し、かつBach2の機能を調節する可能性を持つ因子(リン酸化酵素、ユビキチンE3リガーゼ、そしてコリプレッサー)の同定を手がかりに、ヘムシグナルが、Bach2の構造状態を調節することで、タンパク質相互作用をスイッチさせ、細胞応答過程を調節する分子メカニズムを明らかにする。 本年度は、同定した因子の一つであるユビキチンE3リガーゼとBach2の相互作用、およびE3によるBach2へのユビキチン化の有無について検討した。Bach2とE3リガーゼのタンパク質間相互作用に関しては、細胞核内のタンパク質相互作用が検出できるMammalian Two-hybridシステムを用いて検討した。E3によるBach2へのユビキチン化の有無については、それぞれの組換えタンパク質を発現・精製し、ヘム存在化・非存在化の条件でin vitroユビキチン化アッセイを行い検討した。同時に、同定したリン酸化酵素阻害剤を用い、E3リガーゼとBach2との相互作用にBach2のリン酸化が関与するか否かについても検討を行った。その結果、E3リガーゼとBach2は相互作用が、Bach2のリン酸化依存的に調節されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞核内のタンパク質相互作用の検討:Bach2とE3リガーゼのタンパク質間相互作用に関しては、細胞核内のタンパク質相互作用が検出できるMammalian Two-hybridシステムを用いて検討した。その結果、Bach2と同定したE3リガーゼが細胞内で相互作用することを示す結果が得られた。また、同定したリン酸化酵素阻害剤を用い、E3リガーゼとBach2との相互作用にBach2のリン酸化が関与するか否かについても検討を行った。その結果、E3リガーゼとBach2は相互作用が、Bach2のリン酸化依存的に調節されていることが明らかとなった。 ヘム存在化における同定したE3リガーゼによるBach2のユビキチン化の検出:ユビキチン化反応に必要な、E1とE2タンパク質を調整し、in vitro で同定したE3リガーゼによるBach2のユビキチン化を検討した。その際、同様にヘムの存在化・非存在化における条件でも検討した。その結果、ヘム存在化において、同定したE3リガーゼはBach2をリン酸化できることが明らかとなった。更に、同定したリン酸化酵素によるリン酸化でBach2のユビキチン化が亢進する可能性についても検討した。これについては、更にリン酸化反応条件等の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、ヘム依存的に相互作用するリン酸化酵素が、Bach2を直接リン酸化することは示している。更に、そのBach2のリン酸化は、ヘム存在化・非存在化によってリン酸化サイトが変化することを質量分析法により明らかにしている。そこで、今後の研究として、質量分析法により同定したBach2のリン酸化サイトに対し、部位特異的変異導入し、ヘム存在化・非存在化でリン酸化反応を行い、野生型Bach2と比較検討を行うことで、ヘム依存的に変化するリン酸化サイトについての検証を更に進めていく。 本年度、同定したE3リガーゼが、ヘム存在化でBach2をユビキチン化することは示された。しかしながら、Bach2のリン酸化がBach2のユビキチン化を亢進するか否かの可能性については更に条件検討が必要であるため更に進めていく。
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