研究課題/領域番号 |
19K06543
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
押川 清孝 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50380051)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 代謝 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
老化に伴い細胞は特殊な代謝状態を取ることが知られているが、これまで老化代謝を対象にした解析はあまり行われていない。そこで本研究課題では、われわれが独自に開発した次世代プロテオミクス技術(iMPAQTシステム)を駆使して、老化過程で起こるタンパク質発現量変化の網羅的な解析を実施している。本研究の実施・遂行の結果として代謝経路の人為的操作により老化状態を制御することが可能となれば、多くの細胞老化と関わると推定されている種々の疾患の診断や治療あるいは予防に役立つだけでなく、逆に老化を促進することによってがん細胞の撲滅を図る戦略も可能になることが期待できる。 前年度までに3種類の老化誘導モデル(複製老化、酸化ストレス誘導老化、がん遺伝子誘導老化)の全代謝酵素関連タンパク質の情報基盤多重モニタリング法と、転写産物量の計測を実施した。その結果、3種類の老化細胞に共通する代謝変動パターンと各種老化細胞特異的な代謝ネットワークのリモデリングを見出すことに成功している。 令和三年度は、3種類の老化細胞で発現が減少していたDNA合成関連酵素群の過剰発現およびノックダウン実験を実施し、代謝酵素量の介入実験による細胞老化の制御が可能かを検証した。このうち、Ribonucleotide reductase subunits (RRM)遺伝子の発現を正常細胞で低下させたところ、細胞の増殖が停止した。このノックダウン細胞を詳細に解析したところ、老化細胞の表現型を示すことを見出した。RRM遺伝子の低下に伴い、p16, p21の発現量の上昇およびLamin B1の発現量の低下していた。また老化マーカーであるSA-β-Gal染色も陽性であった。以上から、DNA合成酵素の発現を低下させることで細胞老化が生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに3種類の老化細胞での共通する代謝変動パターンと各種老化細胞特異的な代謝ネットワークのリモデリングを見出すことに成功している。また正常細胞でDNA合成関連酵素の発現を減少させることにより、老化細胞の表現型を示すことも見出した。 よって本研究計画は順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
DNA合成代謝産物も老化制御に関わっている可能性があるため、今後は代謝産物による介入実験も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関の変更に伴い、研究設備の準備等に時間を要している。そのため昨年度実施を予定していた、代謝物の網羅的定量解析およびトランスオミクスデータ統合実験を本年度以降に実施するように本研究計画を変更した。
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