研究課題/領域番号 |
19K06544
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂本 泰久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20613392)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インテグリン / エンドサイトーシス / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
がん細胞の異常な増殖、生存、運動能はがん悪性化の原因となる。これには細胞接着分子インテグリンの活性化が関与する。本研究ではユビキチン化酵素Nedd4Lによるインテグリンβ1の下方制御機構、そしてその破綻ががん悪性化に寄与する仕組みを解明する。我々は、既にNedd4Lがインテグリンα5β1のエンドサイトーシスを制御することを見出している。今回、がん細胞株におけるNedd4Lの役割を明らかにするため、Nedd4Lのノックダウンを行った。Nedd4Lの発現低下によって、がん細胞株の細胞運動と細胞増殖が亢進した。また、がん細胞株における細胞表面の活性化インテグリンβ1を測定した結果、Nedd4Lの発現抑制によって活性化インテグリンβ1が増加することが明らかになった。よってNedd4Lは細胞膜におけるインテグリンβ1を抑制することで細胞増殖と細胞運動を制御する可能性が示唆された。さらに、Nedd4Lがインテグリンβ1を下方制御する際のシグナル伝達機構を解析し、Nedd4Lがインテグリンα5β1の刺激によって活性化することを見出した。以上の結果から、Nedd4Lはインテグリンα5β1の下流で活性化し、インテグリンをエンドサイトーシスすることで下方制御することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nedd4Lの活性化機構が明らかになりつつあることは予想以上の成果である。一方でインテグリンのユビキチン化がその機能抑制において重要と考えられることから、ユビキチン化経路だけでなく脱ユビキチン化経路も解明する必要がある。脱ユビキチン化酵素(DUB)の同定には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
Nedd4Lの活性化機構の解明: Nedd4Lがインテグリンα5β1の刺激によって活性化するシグナル伝達機構について、リン酸化カスケードの関与を調べる。質量分析によってNedd4Lのリン酸化部位を同定し、責任リン酸化酵素を同定する。 Nedd4Lによってインテグリンに付加されるユビキチン鎖の性状解析、機能解析: Nedd4Lがインテグリンα5β1をユビキチン化し、下方制御する際に、インテグリンに付加されるユビキチン鎖の性状を解析し、それを元にタンパク質の分解、局在、機能制御を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3月に新型コロナウイルスの拡散防止のため在宅勤務を行い、研究が行えなかったため。
|