研究実績の概要 |
公共データベースを用いた解析から、肺癌の中でも特に肺腺癌において、Nedd4Lの発現低下が5年生存率の低下と相関する予後不良因子であること見出した。そこで実際に、肺腺癌細胞株PC9とNCHI358においてNedd4Lの発現低下と細胞の増殖と運動への影響を調べた。PC9細胞とNCIH358細胞においてNedd4Lの発現をsiRNAによって抑制した。PC9細胞はNedd4Lのノックダウンによって細胞増殖と運動の亢進が見られた。しかしNCIH358細胞はNedd4Lのノックダウンによる影響は見られなかった。PC9は上皮成長因子受容体(EGFR)変異株であり、EGFR-チロシンキナーゼインヒビター(TKI)も著効する。一方でNCIH358はKRas G12Vの変異が見られEGFR-TKIは効果を示さないことが知られる。これまでの我々の研究と他グループの研究(J. Transl. Med. 20, 1-11, 2022)から、Nedd4LはEGFRの下流であると考えられ、Nedd4LはEGFR変異株においても細胞運動と細胞増殖を抑制的に制御すると考えられた。一方で、EGFRの下流であるKRasは細胞運動と細胞増殖をより直接的に制御するため、KRas変異を持つ細胞株においてNedd4Lのノックダウンの影響は見られなかったと考察した。さらにHeLa細胞を用い、細胞運動におけるインテグリンα5β1の影響を検討した。Nedd4LのノックダウンによってPC9細胞と同じくHeLa細胞の細胞運動が亢進するが、インテグリンα5、またはβ1の阻害抗体によって細胞運動が抑制された。以上のことから、Nedd4Lノックダウンによってインテグリンα5β1の機能が亢進され細胞運動が促進したことが示唆された。
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