研究実績の概要 |
申請者の研究グループは、自然に存在するラットの中に、高脂肪食を食べても肥満にならない肥満抵抗性ラットを見出し、同ラットを解析したところ、内臓脂肪のマクロファージにおいて、生理活性ペプチドであるグアニリン(Gn)とその受容体であるGC-Cの両分子が高発現している個体がいることを明らかにしている。本研究ではマクロファージにおけるGn/GC-Cシステムの機能を解明し、肥満の基盤となる慢性炎症を抑制する機序を明らかにする。本研究では、Gn/GC-C発現マクロファージ細胞株に、飽和脂肪酸(ラウリン酸, ミリスチン酸, パルミチン酸)や不飽和脂肪酸(オレイン酸, リノール酸, リノレン酸)をそれぞれ添加し、脂肪酸によるGnおよびGC-Cの発現量の違いを検討した。不飽和脂肪酸添加後のGn mRNA発現量は、添加前と変わらないが、飽和脂肪酸添加後のGn mRNA発現量は顕著に増加した。脂肪酸は、マクロファージのToll-like receptorを介してNF-kBやMAPKのカスケードを亢進させ、炎症性サイトカインなどの発現を制御している。そこで本研究では、NF-kB経路の阻害剤やMAPK経路の阻害剤を使用し,飽和脂肪酸添加後のGnやGC-Cの発現調節とNF-kBやMAPKカスケードとの関連を検討したところ、NF-kB経路の阻害剤により飽和脂肪酸添加後のGn mRNA発現量の増加は認められなくなった。また、NF-kBにより発現制御を受ける転写因子を検索し、GnやGC-Cのプロモーター領域と結合する候補因子を抽出した。抽出されたいずれかの候補因子がGnやGC-Cの発現調節に機能することをルシフェラーゼアッセイ系を用いて確認している。
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