研究課題
がん細胞から分泌されるエクソソームは、がんの増殖や進展を促進する。本研究では、がん細胞における好気的解糖系(ワールブルグ効果)ががんエクソソー ムの分泌に及ぼす影響とそのメカニズムの解明を目的とした。マウス悪性黒色腫B16-F10細胞を解糖系の阻害剤(2-deoxyglucose, 2-DG)で処理すると、エクソソームとは異なる新規の膜小胞(非エクソソーム小胞)の分 泌が抑制された。2-DGによる非エクソソーム小胞の分泌抑制に関わるメカニズムを解析した結果、2-DGは解糖系の阻害ではなく、小胞体におけるタンパク質のア スパラギン結合型糖鎖修飾を阻害することで非エクソソーム小胞の分泌を抑制していることが明らかとなった。具体的には、細胞内に取り込まれた2-DGはGDP-2- DGに代謝され、アスパラギン結合型糖鎖の前駆体の合成に利用されることで非天然型の糖鎖前駆体が合成される。この異常な糖鎖前駆体は代表者が発見した糖鎖 の品質管理機構によって分解され、アスパラギン結合型糖鎖修飾が抑制される。そして、この糖鎖修飾は、タンパク質の小胞への積み込みと小胞の形成の両方に 関わることが示唆された。 さらに、プロテオミクスの手法を用いて非エクソソーム小胞の生化学的な特徴付けを行なった結果、アスパラギン結合型糖鎖修飾部位を持つ膜タンパク質が濃 縮されており、エクソソームとは異なるタンパク質組成を有していた。また、リピドミクス解析の結果、非エクソソーム小胞にはホスファチジルセリンがわずか に濃縮されていることが分かった。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
STAR Protocols
巻: 2 ページ: 100316~100316
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The Role of Glycosylation in Health and Disease
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