申請者らがγ-poly-D-diaminobutyric acid (Poly-D-Dab)放線菌に見出した新規長鎖D-ペプチド分解酵素Dpdは細胞膜結合型酵素であり、大腸菌などを宿主とした汎用発現系では機能的な組み換えタンパク質として獲得することは困難であった。昨年度はこの技術課題を解消すべく、異種放線菌を宿主とした独自の発現系構築行い、組み換えDpdを機能的に発現させることが可能となった。そこで本研究課題最終年度は、この組み換え酵素を用いた酵素学的諸性質の解析を目指した。 組換えDpd発現菌体の細胞膜画分から界面活性剤を用いて可溶化及び精製して得た精製酵素は、極めて微弱なPoly-D-Dab分解活性しか示さず、更に可溶化後速やかに失活するという不安定性を抱えていることが判明した。界面活性剤の種類や可溶化条件を含む各種精製条件の最適化を試みたが、残念ながら何れにおいても顕著な改善は認められず、in vitroでの機能解析を進めることは困難であった。一方、in silico解析で新たに見出したN末端にシグナル配列を持たないSkemanella aerolata由来のDpdホモログは、大腸菌発現宿主内である程度の可溶性発現が可能であり、更に酵素活性を保ったままNi-アフィニティークロマトグラフィー精製することが可能であった。そこで、当該ホモログ酵素を用いて詳細な機能解析を行い、本酵素がL体のジアミノ酸からなる各種合成ペプチドやPoly-D-Dabと鏡像関係にあるPoly-L-Dabは何れも基質として受容せず、D-アミノ酸残基特異的なエキソ型ペプチダーゼであることを明らかにした。また、その分解反応の至適pHは7~8付近であることが明らかとなった。
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