研究実績の概要 |
本研究では、異常な凝集タンパク質が小胞体内腔に蓄積する疾患モデル生物を用いて、凝集タンパク質の形成とその凝集を解きほぐす分子基盤を明らかにする。これまでにモデル生物である線虫C. elegansを用いて分泌タンパク質が小胞体内腔に特異的に蓄積するpigN変異体を樹立した。その原因遺伝子として糖脂質GPIアンカーの修飾酵素であるPIGNを同定した(Ihara, S. et al., J. Cell Sci., 2017)。ヒトpigN遺伝子の変異は、厚生労働省より指定難病320と定められており、精神遅滞や特異な顔貌などの様々な症状を示し、幼年期に死亡する事が報告されている。申請課題では、多彩な症状の一因と推定される凝集タンパク質の形成機構とその凝集を解きほぐす分子機構を明らかにすることを目的としている。 現在までにATP欠乏下で小胞体内腔で凝集タンパク質が形成するのかを明らかにするために、小胞体内腔のシャペロン分子、BiPタンパク質のATP結合部位、ATP分解部位、変性タンパク質への結合部位のアミノ酸配列に変異を導入したベクターを作製した。また2018年に報告された小胞体のATPトランスポーターAXER (ATP/ADP exchanger in the ER membrane, Marie-Christine, K., et al Nature com., 2018)の局在がpigN変異体で変動するのか、観察を行うためにAXER タンパク質の可視化を行った。さらにサプレッサースクリーニング(凝集タンパク質を抑制する遺伝子のスクリーニング)により凝集タンパク質を減少させる変異体spa-1~3変異体の責任遺伝子を同定した。特にspa-1変異体の原因遺伝子はジスルフィド結合を開裂する酵素活性をもつ小胞体ジスルフィド還元酵素であること明らかにした。
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