研究実績の概要 |
本研究では、凝集タンパク質の形成とその凝集を解きほぐす分子基盤を明らかにすることが目的である。これまでにモデル生物である線虫C. elegansを用いて分泌タンパク質が小胞体内腔に特異的に蓄積するpigN変異体を樹立している(Ihara, S. et al., J. Cell Sci., 2017)。ヒトpigN遺伝子の変異は、厚生労働省より指定難病320と定められている。昨年度は、ATP欠乏下で凝集タンパク質が形成するのかを明らかにするために、小胞体内腔のシャペロン分子、BiPタンパク質のATP結合部位、ATP 分解部位、変性タンパク質への結合部位のアミノ酸配列に変異を導入したベクターを作製したが、それらを用いてすべてトランスジェニック体を作成してゲノム上に組み込み、恒久発現株を構築した。またサプレッサースクリーニング(凝集タンパク質を抑制する遺伝子のスクリーニング)により凝集タンパク質を減少させる変異体 spa-1~3変異体の責任遺伝子を同定した。特にspa-1変異体の原因遺伝子はジスルフィド結合を開裂する酵素活性をもつ小胞体ジスルフィド還元酵素であること 明らかにしたが、その変異と同じアミノ酸変異を野生型線虫に挿入したゲノム編集株を作成した。また小胞体ジスルフィド還元酵素の局在を明らかにするために遺伝子クローニングを行うと同時に、内在性の酵素の局在を明らかにするために、ゲノム編集技術によりGFPを組み込むためのベクターを構築した。また凝集タンパク質で観察されるジスルフィド結合が、変異型小胞体ジスルフィド還元酵素を持つ場合にその割合が減少するのをNativePageによって検討をおこなった。
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