硫化水素、過硫化物(過硫化システイン、過硫化グルタチオン)、多硫化水素などの低分子硫黄化合物は、神経伝達調節や細胞保護など多彩な作用を示す。その産生酵素3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3-MST)を欠損したマウスでは、大脳と小脳において結合型硫黄が減少していることを明らかにした。 3-MSTを欠損したヒト膠芽腫細胞株では、鉄依存性細胞死(フェロトーシス)の誘導剤に抵抗性を示すことを見出した。この結果は、硫化水素がエネルギー産生の亢進や増殖に寄与する大腸がんや卵巣がんなどにおけるはたらきとは異なる結果であり、がん細胞種によって硫化水素が異なる作用をもつ可能性を提示するものである。
|