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2020 年度 実施状況報告書

GTPase活性化タンパク質ArfGAPは「出荷審査」を行うか?

研究課題

研究課題/領域番号 19K06557
研究機関岩手大学

研究代表者

芝 陽子  岩手大学, 理工学部, 准教授 (50755866)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードArfGAP / SMAP1 / AGFG2 / vWF / WPB
研究実績の概要

昨年度までにSMAP1とAGFG2というArfGAPをヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)におけるWeibel-Palade Body (WPB)の形状に関与するとして同定した。WPBのサイズを定量したところ、SMAP1knockdown(KD)細胞ではWPBのサイズが短くなった。AGFG2KD細胞ではvWF染色時に一次抗体のインキュベート時間を長くすると長いWPBが観察可能になり、サイズの変化はなかった。HEK293細胞を用いてSMAP1のknockout(KO)細胞株を作成したところ、偽WPBのサイズが小さくなりsiRNAによるオフターゲット効果ではないことが確認できた。ELISA法によってvWFの分泌量を測定したところ、AGFG2KD細胞でPMA刺激時のvWF分泌量が減少した。AGFG2KD細胞では免疫染色でPMA刺激後もWPBが細胞内に多く残っていた。AGFG2KD細胞にAGFG2を過剰発現させるとPMAの有無にかかわらずWPBが細胞内から減少し、vWF分泌が回復した。分泌vWFの多量体化、細胞内vWFの切断量、分泌顆粒マーカーRab27とWPBの共局在をSMAP1およびAGFG2KD細胞で調べたが、大きな変化がなかったことから、WPBの成熟に大きな変化はないと考えられる。SMAP1KDおよびKO細胞をリソソームの酵素を阻害するロイペプチンで処理したところWPBのサイズが回復したことから、SMAP1は通常長いWPBの分解を阻害しており、欠損によって長いWPBが分解され短いWPBのみ残ったと考えられる。SMAP1が分泌顆粒の分解に、AGFG2が刺激依存性分泌に関与するという報告はこれまでなく、現在論文を投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在論文を投稿中なので、概ね順調に推移している。(査読前の投稿論文がBioRxiv doi: 10.1101/2021.03.29.437631で閲覧可能)。本来の目的であったWPBの形成に関与するArfGAPはここでは発見できなかった。しかしArfGAPファミリーのうち、SMAP1がWPBの分解を抑制していること、AGFG2がvWFの分泌に関与すること、はこれまで報告されておらず、新規性が高い。元の予定ではGAP活性について詳細に調べる予定であった。GAP活性を欠損させる変異体をSMAP1とAGFG2でそれぞれ作成し( SMAP1[R61Q], AGFG2[R75Q])、HUVECに過剰発現させたが、SMAP1の過剰発現では野生型、変異体ともにゴルジ体が壊れてしまい、ポストゴルジの表現型を解析することができなかった。またAGFG2も、野生型、変異体の過剰発現ともにWPBが細胞内から減少し、vWFが分泌されてしまった可能性がある。AGFG2についてはGAPドメインの配列が必ずしも保存されていないことから、もともとGAP活性がない可能性も考えられている(Schlacht et al., Traffic, 14, 636-649,2013)。したがって、少なくともAGFG2については、GAP活性がvWFの分泌に必ずしも必要でない可能性がある。またSMAP1については、過剰発現ではない解析法を考える必要がある。

今後の研究の推進方策

SMAP1については、WPBの分解を抑制している可能性が高く、そのメカニズムを調べたい。WPBとWPBに輸送されていないvWFは両方ともリソソーム内に存在することが報告されている(Torisu et al. Nat Med, 19, 1281-1287,2013)。SMAP1がどちらに関与するかは不明だが、長いWPBの分解を抑制することから、WPBの分解ではないかと考えられる。分泌顆粒の分解にはオートファジーが関与すると考えられており、SMAP1はオートファジーを抑制する分子として機能する可能性がある。この仮説を調べるため、オートファジー抑制によってSMAP1KD細胞の表現型が回復するかどうか、またSMAP1に結合する分子を同定し、SMAP1の機能の全容を解明したい。
AGFG2については、GAPドメインのほか、FGリピートという配列がGAPドメインのC末端側に連なっている。GAPドメインとFGリピートの重要性を調べるため、それぞれのドメインを削った変異体を作成し、HUVECに過剰発現させ、どのドメインがvWF分泌に大事かどうか調べる。またAGFG2は唾液腺で発現が高いことが報告されている(FAGERBERG et al, Mol Cell Proteomics, 13, 397-406,2014)。他の分泌細胞でも重要である可能性が高いことから、ムチン分泌をするゴブレット細胞、インスリンを分泌する膵島β細胞など、他の分泌細胞における分泌にも重要であるかどうかを調べる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Arf GTPase-Activating proteins SMAP1 and AGFG2 regulate the size of Weibel-Palade bodies and exocytosis of von Willebrand factor2021

    • 著者名/発表者名
      Asano Watanabe, Hikari Hataida, Naoya Inoue, Kosuke Kamon, Keigo Baba, Kuniaki Sasaki, Rika Kimura, Honoka Sasaki, Yuka Eura, Wei-Fen Ni, Yuji Shibasaki, Satoshi Waguri, Koichi Kokame, Yoko Shiba
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2021.03.29.437631

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Identification of ArfGAPs involved in formation of Weibel-Palade Bodies2020

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Kamon, Keigo Baba, Asano Watanabe , Hikari Hataida , Naoya Inoue, Rika Kimura, Honoka Sasaki, Kuniaki Sasaki, Yuka Higuchi, Koichi Kokame, Yoko Shiba
    • 学会等名
      第93回日本生化学会大会
  • [学会発表] How do ArfGAPs regulate cargo sorting?2020

    • 著者名/発表者名
      Yoko Shiba
    • 学会等名
      第72回日本細胞生物学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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