現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在論文を投稿中なので、概ね順調に推移している。(査読前の投稿論文がBioRxiv doi: 10.1101/2021.03.29.437631で閲覧可能)。本来の目的であったWPBの形成に関与するArfGAPはここでは発見できなかった。しかしArfGAPファミリーのうち、SMAP1がWPBの分解を抑制していること、AGFG2がvWFの分泌に関与すること、はこれまで報告されておらず、新規性が高い。元の予定ではGAP活性について詳細に調べる予定であった。GAP活性を欠損させる変異体をSMAP1とAGFG2でそれぞれ作成し( SMAP1[R61Q], AGFG2[R75Q])、HUVECに過剰発現させたが、SMAP1の過剰発現では野生型、変異体ともにゴルジ体が壊れてしまい、ポストゴルジの表現型を解析することができなかった。またAGFG2も、野生型、変異体の過剰発現ともにWPBが細胞内から減少し、vWFが分泌されてしまった可能性がある。AGFG2についてはGAPドメインの配列が必ずしも保存されていないことから、もともとGAP活性がない可能性も考えられている(Schlacht et al., Traffic, 14, 636-649,2013)。したがって、少なくともAGFG2については、GAP活性がvWFの分泌に必ずしも必要でない可能性がある。またSMAP1については、過剰発現ではない解析法を考える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
SMAP1については、WPBの分解を抑制している可能性が高く、そのメカニズムを調べたい。WPBとWPBに輸送されていないvWFは両方ともリソソーム内に存在することが報告されている(Torisu et al. Nat Med, 19, 1281-1287,2013)。SMAP1がどちらに関与するかは不明だが、長いWPBの分解を抑制することから、WPBの分解ではないかと考えられる。分泌顆粒の分解にはオートファジーが関与すると考えられており、SMAP1はオートファジーを抑制する分子として機能する可能性がある。この仮説を調べるため、オートファジー抑制によってSMAP1KD細胞の表現型が回復するかどうか、またSMAP1に結合する分子を同定し、SMAP1の機能の全容を解明したい。 AGFG2については、GAPドメインのほか、FGリピートという配列がGAPドメインのC末端側に連なっている。GAPドメインとFGリピートの重要性を調べるため、それぞれのドメインを削った変異体を作成し、HUVECに過剰発現させ、どのドメインがvWF分泌に大事かどうか調べる。またAGFG2は唾液腺で発現が高いことが報告されている(FAGERBERG et al, Mol Cell Proteomics, 13, 397-406,2014)。他の分泌細胞でも重要である可能性が高いことから、ムチン分泌をするゴブレット細胞、インスリンを分泌する膵島β細胞など、他の分泌細胞における分泌にも重要であるかどうかを調べる。
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