研究実績の概要 |
真核細胞には膜で囲まれた細胞小器官(オルガネラ)が存在し、タンパク質や脂質などの積荷が選別されて輸送されている。細胞内で選別過程は極めて精緻に行われている。申請者は低分子量Gタンパク質ArfのGTP型をGDP型に加水分解するArfGAPファミリーが、積荷受容体が輸送小胞に詰め込まれる過程で受容体とコートタンパク質の組み合わせをチェックする「出荷審査」を行なっていることを見出した(Shiba et al, Cell Logistics, 2011, Shiba et al, Curr Biol, 2013)。しかしながら、積荷受容体や輸送小胞が関与しない輸送過程においてもArfGAPファミリーが「出荷審査」を行なっているかどうかは分かっていない。 von Willebrand Factor (vWF)は血管内皮細胞に発現する止血因子で、Weibel-Palade Body (WPB)という分泌顆粒に蓄積され、WPBは長い葉巻型の分泌顆粒として成熟する。その後外部刺激に応じてWPBは細胞膜と融合し、vWFは血液中へ分泌され、血小板をトラップして血栓を作る。vWFの過剰分泌は血栓症を誘発するが、分泌阻害は出血傾向になるため、その輸送は厳密に調節される必要があるが、分泌調節がどのように行われているかはまだ不明である。 申請者らはSMAP1とAGFG2というArfGAPをvWFの輸送に関与する新規分子として同定した。SMAP1は欠損するとWPBのサイズが小さくなり、WPBのリソソームにおける分解を促進していると示唆された。一方AGFG2を欠損させると、WPBは形成されるが刺激依存性のvWFの分泌が阻害されたため、WPBと細胞膜との融合過程が阻害されることが示唆された。令和3年度はこれらの結果を論文にまとめ、Biology Open, 2021 Sep 15;10(9)に発表した。
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