研究課題
膜内切断プロテアーゼは、膜内で加水分解を行う特殊なタンパク分解酵素で、どのようにして反応を遂行するのかについて、よく分かっていない。本研究では、モデル生物である出芽酵母に切断反応を再構成した独創的な解析手法をとり入れ、種々の変異体を同定・解析することにより、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβ(Aβ)を作り出すγセクレターゼ複合体とそのモデルとなる単量体膜内切断プロテアーゼによる分解のメカニズムを明らかにすることを目的とした。令和3年度においては、γセクレターゼについての研究に注力し、1)γセクレターゼの基質であるアミロイド前駆体(APP)中に同定した切断感受性を高める変異体を、神経細胞(SH-SY5Y)もしくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に導入して解析した。酵母の系と同様の切断活性の上昇に加え、基質特異性が変化し、Aβ分子種の生成割合が変化することを明らかにした。また、基質結合ポケットに存在するPS1の活性化変異部位について、18種類のアミノ酸に置換した変異体を作製し、APPの切断感受性変異体と組み合わせて酵母に導入し、活性上昇の要因を解析した。 2)γセクレターゼの調節サブユニットであるAph1のプロテアーゼ活性化変異について、マウス胎児線維芽細胞 (Aph1TKO MEF)を用いた解析を継続した。活性化変異はAβ生成総量を増加させる一方、短鎖Aβ・長鎖Aβ分子種の割合は変化せず、また、蛍光基質切断の触媒活性も上昇していた。一方、阻害剤への応答性は変化しなかった。また、γセクレターゼの複合体量は変化せず、複合体形成への影響は見られなかった。Aph1がγセクレターゼの活性調節機能を持つことを示唆する成果であり、投稿論文で発表した。
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