研究課題
地上に降り注ぐ太陽光の約4割は近赤外光であり、未利用のエネルギー資源である。原始の光合成生物である紅色光合成細菌は、低エネルギーの近赤外光を光電変換する光捕集・電荷分離システム(光捕集1反応中心複合体:LH1-RC)を備えており、低いエネルギーを高いエネルギーに変換するuphill型エネルギー移動により近赤外光をエネルギー源とした光-物質変換を営んでいる。本研究では、より低いエネルギーを吸収し、より高いuphillエネルギー勾配を遡る紅色細菌由来LH1-RCの色素間、色素ータンパク質間の特異的な相互作用を紫外可視、赤外、ラマン分光学法を用いて詳細に解析することにより、紅色細菌による近赤外光電変換メカニズムの解明を目的とした。今年度は、光電変換を担うRCスペシャルペアの吸収をLH1-RCあるいは光合成膜の状態で測定可能なシステムを構築した。従来はRCを単離していたが、LH1の存在によってRCの性質が影響を受ける可能性が高く、種々の紅色光合成細菌について無傷状態での測定を行なった。その結果、Trv. strain970では、カルシウム結合によってスペシャルペアの吸収ピークが異常に長波長シフトしていることを見出した。Trv. strain970ではLH1の吸収バンドも著しく長波長していることから、LH1からRCへのuphillエネルギーギャップが非常に大きいと考えられていたが、RCも長波長シフトすることによってギャップを小さくするような仕組みが存在していることが明らかになった。また、スペシャルペアはバクテリオクロロフィルの2量体であるが、Trv. strain970の系では2量体のみでも大きくシフトしていることから、バクテリオクロロフィルは光捕集アンテナとして未知のポテンシャルを秘めており、現在、構造解析と合わせてスペシャルペアの長波長シフトの要因解明に取り組んでいる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)
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