研究課題/領域番号 |
19K06564
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
両角 佑一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80571439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分裂酵母 / target of rapamycin / mTORC1 |
研究実績の概要 |
2020度は、分裂酵母mTORC1の構成因子であるMip1のPsk1(mTORC1基質)との相互作用に重要だと推測される、533番目のチロシン残基をアラニンに置換したMip1-Y533A変異体を発現する分裂酵母株の表現型を解析した。その結果、mip1-Y533A変異株ではPsk1のリン酸化レベルが著しく低下し、Mip1変異体とPsk1の相互作用も損なわれていることがわかった。 当該年度は、Mip1-Y533A変異体についてさらに解析を進めた。mip1-Y533A変異株で観察されるPsk1のリン酸化レベル低下が、実際にTORC1のキナーゼ活性の低下によるものなのかを検討した。分裂酵母細胞抽出液よりmTORC1を精製し、TOSモチーフ依存的にリン酸化される4EBP1を基質として試験管内リン酸化アッセイを行った結果、Mip1-Y533A変異体を含むmTORC1のキナーゼ活性は顕著に低下していた。このことから、mip1-Y533A変異株では、TOSモチーフ依存的なmTORC1のキナーゼ活性の低下により、Psk1のリン酸化が損なわれたことが示唆された。 またmip1-Y533A変異株において、mTORC1の基質であるAtg13のリン酸化レベルが低下することを見出している。興味深いことに、Atg13の538-542のアミノ酸領域(FDIDT)がTOSモチーフと類似しているため、当該年度は538番目のフェニルアラニン残基をアラニンに置換したAtg13-F538Aを発現する酵母株を作製し、Atg13のリン酸化レベルを調べた。その結果、実際にAtg13のリン酸化の低下が観察されたことから、Atg13はTOSモチーフを介してリン酸化されるmTORC1基質であることが明らかになった。また、Mip-1Y533A変異はTOSモチーフ依存的にリン酸化される基質の探索に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、コロナ禍の影響を受けて一部研究が計画通り実施できておらず、多少進捗に遅れが出てしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
mip1-Y533A変異株はラパマイシン感受性を示すが、この変異株をラパマイシン含有培地で培養すると、ラパマイシン抵抗性を獲得した復帰突然変異体が単離できることを見出した。この復帰突然変異体は、mTORC1の制御因子や基質の変異によってラパマイシン抵抗性を獲得したことが予想される。そこで、これらの復帰突然変異体に含まれる変異を全ゲノム解析することで原因遺伝子を特定し、その遺伝子産物の解析などを進めることで新たなmTORC1制御因子や基質の機能を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、コロナ禍の影響により当初の計画通りに研究が実施できなかった。そのため、消耗品費など支出が予定より低く抑えられた。当該年度に実施できなかった研究は2022年度に遂行するが、次年度使用額分はその研究遂行にあたって必要となる消耗品費として全額使用する予定である。
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