研究課題/領域番号 |
19K06567
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田村 茂彦 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90236753)
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研究分担者 |
藤木 幸夫 株式会社レオロジー機能食品研究所, 未登録, 顧問研究員、九州大学-レオロジー機能食品研究所 共同研究代表 (70261237)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム / 細胞周期 / リン酸化 / 膜透過輸送 |
研究実績の概要 |
ペルオキシソーム形成因子のなかでもPex14pは膜透過装置の主要な構成因子であり、ペルオキシソーム移行シグナルタイプ1の受容体であるPex5pとマトリクスタンパク質の複合体がドッキングする場である。その後Pex5p-マトリクスタンパク質複合体は膜透過装置の働きでペルオキシソーム内腔側へと輸送されるが、その輸送と制御メカニズムの詳細は未だ明らかにされていない。そこで2019年度の本研究ではPex14pの翻訳後修飾が膜透過輸送に与える影響に着目して研究を行った。その結果、HeLa細胞及びCHO K1細胞の細胞溶解液をPhos-tag SDS-PAGEで解析したところ内在性Pex14pの一部がリン酸化されていることを見出した。そこで、細胞周期を同調させた細胞を用いて同様の解析を行ったところ、内在性Pex14pは分裂期特異的にリン酸化されることを明らかにし、Ser232残基がリン酸化部位であることを質量分析により同定した。これらリン酸化部位への変異導入解析から、Pex14pのリン酸化はPex5pとの結合能には影響を与えないが、ペルオキシソームへのマトリクスタンパク質輸送を負に制御することを示した。また、Pex14pのC末端側領域に着目した解析から、Pex14pのリン酸化がコイルドコイルドメインを介したホモ二量体形成を亢進・安定化し、特にPex5pの細胞質へのリサイクリング機構を抑制することを示唆する結果を得た。つまりPex14pのリン酸化はPex14pの動的な複合体形成と構造変化を制御することで、ペルオキシソーム輸送能全体を低下させることが示唆された。このようにPex14pのC末端側領域がペルオキシソームマトリクスタンパク質の輸送制御に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長年にわたりその役割が不明であったPex14pのリン酸化について、その役割とリン酸化部位を生化学的な解析から明らかにしたことは特筆に値する。2019年度に得られた研究成果をJournal of Cell Biologyへ投稿し、現在、改訂中であることから、近いうちに2019年度の研究成果を世界に向けて発信することが可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、Pex14pのリン酸化によってその複合体構造の動的な変化を抑制することでマトリックスタンパク質輸送を阻害することを明らかにした。しかしながら、その分子メカニズムの詳細までは明らかにできていない。そこで、2020年度はPex14pのリン酸化が及ぼす影響を構造生物学的なアプローチから研究を展開する。また、Pex14pが担う膜透過輸送を定量的に解析するための再構成膜実験系を構築し、Pex14pのリン酸化が膜透過輸送に与える影響について、より詳細に解析を進める。さらにはPex14pのリン酸化とペキソファジーとの関わりについても着目しながら包括的に解析を進め、2019年度に得られた研究成果をさらに発展させるべく、引き続き研究を進める。
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