研究課題
今年度は、EBI3が会合しその標的分子の発現を蛋白質レベルで増強する分子として、IL-23RaやMHCクラスIの他に何かないかについて、抗EBI3抗体を用いた免疫沈後反応とその後の銀線色により網羅的に解析する他、以前に会合が報告されているがその役割は未だ不明の選択的オートファジーのための標的となる他の分子と結合するオートファゴソームのカーゴ蛋白質であるSequestosome 1/SQSTM1/p62との会合について検討した。(1) 網羅的解析:EBI3の標的分子として、これまで見出したIL-23RaやMHCクラスIの他に何かないかを網羅的に調べるために、EBI3発現ベクターおよびコントロールとしてその空ベクターを強制的に遺伝子導入したマウスメラノーマB16F10腫瘍細胞の細胞溶解液を抗EBI3抗体で免疫沈降し、電気泳動で分離し、銀染色によるEBI3と特異的に共沈降される分子のバンドを切り出し、質量分析法により解析し、会合する分子の同定を試み、複数の候補を得て、現在、個別に会合等の検討を行っている。(2) Sequestosome 1との会合:以前に、EBI3の同定の論文でEBI3がp62と会合することが報告されているが、その時は、p62の機能は不明であった。そこで、まず、両者が会合するかを、それぞれの発現ベクターをHEK293T細胞に遺伝子導入し、その細胞溶解液をそれぞれの分子に対する抗体を用いた免疫沈降反応とウエスタンブロット解析により、両者が会合することがわかった。次に、EBI3およびコントロールベクターを恒常的に発現するB16F10細胞を用いて、オートファジーのマーカであるLC3の発現をその抗体を用いたウエスタンブロットにより、EBI3が存在するとLC3の発現が増強され、オートファジーが促進される結果が得られ、さらに検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
EBI3と会合する分子は、いくつもあるようで、1つ1つ確認するのに時間がかかっているが、概ね予定通り進んでいると思う。
今年度は、 EBI3が結合し細胞内でリガンド非依存的に活性化シグナルを誘導する現象の解明を行う。(1) gp130:他のグループにより、EBI3発現は腫瘍内で高く、腫瘍増殖を促進している結果が報告されたが、その機序は不明のままである。我 々は、EBI3がgp130の細胞外領域に結合することも見出しており(未発表)、gp130発現は、腫瘍を含め広範囲で見られ、その変異体が恒常的に 小胞体やゴルジ体で活性化シグナルを細胞内で誘導し腫瘍発生に関与していることなども報告されているため、EBI3がgp130に結合し、細胞内 のSTAT3の活性化など活性化シグナルを入れている可能性を考え、それを明らかにする。まず、増殖因子依存的に増殖するマウスBa/F3は内在性 gp130を発現していないため、これにgp130を遺伝子導入した細胞に、EBI3をレトロウイルス発現ベクターを用いて導入し、増殖因子を加えなく てもEBI3依存的に増殖してくるか検討する。増殖が見られれば、免疫組織学的手法を用いてSTAT3のリン酸化が細胞内の小胞体やゴルジ体、細 胞膜近傍のどこで見られるか等を調べ、その作用機序を明らかにする。(2) IL-23Rα:我々は、HEK293T細胞にIL-23RαとIL-12Rβ1、EBI3、ST AT3反応性GAS-Lucを強制発現させると、IL-23刺激がなくてもEBI3の発現量依存的にルシフェラーゼ活性が増強する(未発表)。また、EBI3は 、IL-23Rαの細胞外領域に結合することも見出しており、EBI3とIL-23Rα、カルネキシンが結合し、小胞体やゴルジ体で、STAT3のリン酸化な ど活性化シグナルを入れている可能性を考えている。そこで、免疫組織学的手法などを用いてそれらを明らかにする。
端数をピッタリ合わすことが難しいため、次年度使用額が生じた。次年度請求額と合わせて、消耗品の購入に充てる予定である。
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