研究課題/領域番号 |
19K06573
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
江藤 真澄 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (20232960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | KAT-WB / キナーゼ活性検出法 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は細胞内の主要なSer/Thr脱リン酸化酵素の一つであるPP1シグナルの役割を解明するために、申請者が発見した新規の内在性調節タンパク質PHI-1の動作原理を解明することである。初年度は研究項目1「PHI-1リン酸化によるPP1調節の分子機構を明らかにし、細胞なPP1・PHI-1複合体の動作原理の決定」を中心に実施した。申請者の研究結果から、リコンビナントPHI-1は精製されたPKCやROCKによってPHI-1(Thr57)がリン酸化されるとPP1活性を阻害することが明らかになっていた。一方、細胞内においてその反応を担う細胞内キナーゼについての知見は限られていた。細胞内に500程度発現していると推定されるキナーゼのうち、どれがPHI-1(Thr57)をリン酸化するのか?PHI-1キナーゼは組織・細胞間で普遍的なのか?この疑問の答えを見いだすために、網羅的でかつ簡便にキナーゼを探索する方法について最適化を行った。Kinase-Activity tagged western blotting (KAT-WB)と名付けた方法は、細胞や組織の抽出液をSDSゲルで展開し、PVDF膜に転写後、特定のキナーゼ活性を抗リン酸化抗体を用いて検出できる。総タンパク質を転写した膜にリコンビナントPHI-1を吸着させ、膜上でリン酸化反応を行い、リン酸化されたPHI-1を申請者が開発した抗リン酸化PHI-1抗体を用いて検出した。その結果、骨格筋、心筋、神経細胞にはサイズの異なるPHI-1をリン酸化するキナーゼが発現していることが明らかとなった。分子量から、これらのPP1シグナルを担うPHI-1キナーゼはPKCやROCKとは異なることが推定される。KAT-WBの結果についてはBioTechniques誌に発表し、同誌よりインタビューを受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KAT-WBの最適化とそれを使ったキナーゼの網羅的な探索に加えて、研究項目2「PP1・PHI-1複合体による細胞内Raf-1 proteostasisの制御機構を決定」と研究項目3「PP1・PHI-1・Raf-1を介した心筋細胞のサバイバル・肥大化シグナルの決定」の為の実験条件の検討を進めることができ、技術的な問題は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果は作業仮説と矛盾しない。2年目に入り、COVID19対策のため研究できない状況にあるが、再開後は申請通りに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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