研究課題/領域番号 |
19K06575
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柊元 睦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (30321756)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / シグナル伝達 / Gタンパク質 / 細胞運動 / SPR |
研究実績の概要 |
細胞運動は生体内で重要な役割を果たす一方、癌の浸潤・転移、免疫難病といった疾患とも密接に関連している。ELMO-DOCK複合体はRhoファミリー低分子量Gタンパク質のグアニンヌクレオチド交換因子であり、Racを活性化することにより細胞運動を促進する。細胞では複数のシグナル上流因子がELMOに結合することによりELMO-DOCK複合体の機能が制御されているが、その構造基盤は不明である。 本研究ではスカフォールドタンパク質としてのELMOに注目し、その立体構造をシグナル上流因子との複合体の状態でX線結晶構造解析等により解析し、ELMO-DOCK-Racシグナル伝達の制御機構の解明を目指している。そして疾病に関わるRacシグナルを特異的に阻害するための新たなタンパク質間相互作用の解明を目的とする。 2019年度は、ELMO1とそのシグナル上流の制御因子であるRhoGや三量体Gタンパク質について、複合体の試料調製と結晶化条件の検討を行った。その結果、ELMO1のN末端に位置するRas結合ドメイン(RBD)に関して、RhoGとの複合体の結晶構造決定に成功した。決定した複合体構造から、ELMOのRBDの立体構造はRafキナーゼなどのRBDと類似したユビキチンフォールドを取るものの、これまで知られている他のタンパク質由来のRBDとは異なる新規の結合様式でGタンパク質を結合することが明らかになった。またSPR法により、ELMO1変異体とRhoGの相互作用解析を実施し、ELMO1のRhoG結合に重要なアミノ酸残基を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、ELMO1とその制御因子との複合体の調製と結晶構造解析を計画した。計画通りにELMO1の複数の領域についてRhoG、三量体Gタンパク質との複合体試料調製と結晶化条件の検討を行い、ELMO1のRBDとRhoGの複合体の結晶構造解析に成功した。さらにSPR相互作用解析により両者の結合の特異性を明らかにすることができたことから、概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きELMOと制御因子との複合体構造解析を推進する。構造解析に適したタンパク質試料を選定するために、SPR相互作用解析による結合親和性の評価を実施する。最近、ELMO2のN末端側に位置する制御領域に関してGPCRの一つであるBAI1との複合体結晶構造が報告されたことから(Nature Commun 2019, 10:51)、この構造情報も活用する。さらに全長ELMOを含むタンパク質複合体の試料調製方法を検討し、三者以上のシグナル伝達因子複合体の構造解析を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月から新型コロナウイルス拡散防止のための在宅勤務を推進したため、次年度使用額が生じた。翌年度以降、実験に必要な消耗品に使用する。
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