研究実績の概要 |
本研究の目的は、不均一な動態を示す細胞集団が統合された機能体である血管を形成するメカニズムを明らかにすることである。具体的には、in vitro血管新生モデルを用いて血管構造全体での1細胞レベルでの細胞動態定量観察を行い、不均一な細胞動態の時空間的特性を見出す。 これまでに、マウス大動脈組織片を用いたin vitro血管新生モデル(大動脈リングアッセイ)での血管新生ライブイメージングを行った。その結果、内皮細胞が血管伸長方向に進行後、方向転換して新生血管部根元まで逆走する興味深い細胞往復運動(Uターン動態)を発見した。さらに、Uターン動態を示す割合が新生血管の根元から供給される細胞数(供給細胞数)および血管形状に依存することが示唆され、供給細胞が無い孤立した血管構造ではUターン動態が顕著に観察された。以上の研究結果をまとめ、論文発表[1]および学会発表[2]を行った。 [1] N. Takubo, F. Yura, K. Naemura, R. Yoshida, T. Tokunaga, T. Tokihiro, H. Kurihara. “Cohesive and anisotropic vascular endothelial cell motility driving angiogenic morphogenesis.”Scientific Reports 9, 9304 (2019). [2] 田久保直子,他 「血管新生における血管内皮細胞の往復運動」第57回日本生物物理学会年会 2019年9月. さらに、培養内皮細胞(マウス膵臓由来内皮細胞(MS-1))のみから構成される2次元血管新生モデルを確立し、他の血管細胞からの動態への影響が無い内皮細胞固有の動態を観察した。その結果、本モデルでもUターン動態が観測された。
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