研究課題/領域番号 |
19K06582
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神山 勉 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (30170210)
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研究分担者 |
井原 邦夫 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体イオンポンプ / レチナールタンパク質 / 光駆動プロトンポンプ / 光駆動陰イオンポンプ / レチナール光異性化 / X線結晶構造解析 / アーキロドプシン / ハロロドプシン |
研究実績の概要 |
1)塩素イオンポンプ・ハロロドプシンのイオン輸送機構についての先行研究で、イオン輸送サイクルの間に、タンパク質部分では3種類の構造変化が起こり、発色団レチナールも3種類の異性化状態を経る反応を起こすことを示し、レチナールの異性化→タンパク質の構造変化→イオン移動→レチナールの異性化、…、という具合に反応が進行することでイオンの一方向の輸送が保証されることを提唱した。本研究課題では、上記と同様な反応機構が光駆動プロトンポンプ(バクテリオロドプシンやアーキロロプシン)でも働いている可能性を論じるため、これらのタンパク質の光誘起吸収変化を詳しく調べ、特にアーキロドプシン―2については、その光サイクルの後半部分の反応キネティックスがpHに強く依存し、従来一つと考えられていたN中間体には分光特性の異なる3種類の準安定状態が存在することを明らかにした。 2)アーキロドプシンのN中間体の3つの準安定状態の間の差異を調べるため、サブミリ秒の時間分解能を有するにpHセンサーを開発した。 3)高度好塩菌の光センサーとして働く膜タンパク質・センサリーロドプシン―2(sR2)の結晶を膜融合法により作製し、2.7Å分解能のX線回折データ(空間群はC222(1)、結晶格子定数はa=87.4Å, b=127.0Å, c=98.5Å)を収集した。膜融合法を利用したにもかかわらず、得られた結晶構造(タンパク質の充填具合)は他の結晶化法(LCP法)で作製された結晶中のものとほとんど同一であった。 4)塩素イオンポンプ・ハロロドプシンに重炭酸イオンに結合した状態の構造を2.0Å分解能で決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アーキロドプシンの反応中間体(N中間体)のX線結晶構造解析を目標にしているが、アーキロドプシンの反応キネティックスが予想以上に複雑で、その解析に時間を要しており、N中間体の構造解析に適した結晶を作製する作業に遅れがでている。
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今後の研究の推進方策 |
アーキロドプシンの光誘起吸収変化およびpH変化の測定精度を高め、分岐反応を伴う光反応サイクルの詳細を明らかにする。アーキロドプシンのN中間体(大きな構造変化を伴うと予想)の構造解析に適した結晶(具体的には、空間群P321の結晶)の作製する工程を改善し、より高分解能のX線回折像を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で出張機会が減り、旅費の使用額が少なくなった。今年度も出張機会が減ると予想しており、旅費の一部を現在開発中の高時間分解能pH変化測定装置の高精度化のために必要な物品の購入に充てる。
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